カディロフツィ

ロシア連邦英雄アフマド・カディロフ名称第141特殊自動車化連隊

ロシア連邦英雄アフマド・ハジ・カディロフ名称第141特殊自動車化連隊は、第46独立作戦任務旅団に所属する連隊の一つです。この連隊は、チェチェン共和国の事実上の統治者であるラムザン・カディロフの私兵集団、通称「カディロフツィ」を合法化する目的で存在しています。カディロフツィは、チェチェン国内で大きな影響力を持つ準軍事組織として知られています。

歴史

1994年、カディロフツィはチェチェンの独立派武装組織として誕生しました。当初はアフマド・カディロフの指揮下で第一次チェチェン紛争においてロシア軍と戦いましたが、1999年の第二次チェチェン紛争でアフマドはロシア側に寝返り、2000年にチェチェン大統領に就任しました。その後、アフマドはチェチェン・イチケリア共和国の分離主義者やイスラム過激派との戦いを始めました。2004年にアフマドが暗殺されると、彼の息子であるラムザン・カディロフが民兵の指揮を引き継ぎました。

カディロフツィの規模は2万人を超え、2016年に国家親衛隊に移管されるまではロシア内務省の統制下にありました。現在、第141連隊として存在していますが、チェチェン油田を護衛する石油連隊やOMON（チェチェン共和国OMON）、SOBR（チェチェン共和国SOBR）といったスペツナズのメンバーもカディロフツィから選抜されています。

民兵としての活動

ロシア側に転向したアフマド・カディロフとカディロフツィは、ロシアのためにアスラン・マスハドフ政権軍などと戦いました。当時のカディロフツィはアフマドの私的な警護部隊であり、アフマドと同様にロシア側の恩赦を求めた元独立派によって構成されていました。指揮官はアフマドの側近であるモブラディ・バイサロフでした。

アフマドの大統領就任に伴い、カディロフツィはOMONをはじめとするチェチェンの治安機関を掌握しました。反カディロフ派のOMON指揮官ムサ・ガジマゴマドフが「奇妙な状況」で事故死した後、カディロフツィのルスラン・アルハノフが新たな指揮官となりました。

合法化

アフマドの暗殺後、彼の保護を担当していたカディロフツィは名目上の解散を経て、ロシア国内軍のセーヴェル大隊およびユーク大隊に編入される形で事実上合法化されました。この際、カディロフツィの副司令官であったラムザンが再び指揮を執りました。これらの部隊には装甲車が配備されるなど機械化が進められました。

その後、カディロフ一族は分離主義者との戦いだけでなく、2006年にラムザンと対立したバイサロフをモスクワで暗殺し、ロシア軍内にいた他の部族による部隊に圧力をかけて解散させるなどして、チェチェン内の軍事力を独占するようになりました。2009年にはセーヴェル大隊を基に第141特殊自動車化連隊が編成され、2016年にはロシア国家親衛隊に編入されました。

ウクライナ侵攻

2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻において、第141連隊はキーウ近郊のホストーメリ空港攻撃に参加しました。当初、ウクライナ軍の反撃により殲滅され、司令官のマゴメド・トゥシャエフが戦死したと報じられましたが、後に否定されました。また、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領暗殺計画やザポリージャ原子力発電所侵攻にも関与したとされています。

カディロフツィはソーシャルメディアを用いた宣伝活動を積極的に行っているため、「TikTok大隊」と揶揄されることもあります。2022年、ラムザン・カディロフは「北アフマート大隊」「南アフマート大隊」「西アフマート大隊」「東アフマート大隊」というチェチェン人部隊を新設し、ウクライナ侵攻に動員したことを発表しました。

人権問題

カディロフツィは、戦間期に犯罪歴のある者が多く、人権活動家からは、カディロフの支配を強固にするために殺人、拷問、誘拐に関与していると指摘されています。また、強盗や多額の身代金請求といった金銭目的の犯罪も行っていたとされています。

さらに、ウクライナ侵攻時にはブチャの虐殺に関与したとされており、戦争犯罪の疑いが持たれています。これらの行為は、カディロフツィが単なる軍事組織ではなく、人権侵害を繰り返す組織であることを示しています。

関連部隊

アフマト・カディロフ名称特別任務民警連隊: チェチェン内務省所属の特殊部隊で、ラムザン・カディロフの私兵。
セーヴェル大隊 / ユーク大隊: ロシア国内軍に所属するラムザン・カディロフの私兵。
ジョハル・ドゥダエフ大隊 / シェイク・マンスール大隊: ウクライナに亡命した独立派チェチェン人部隊。
ロシア特殊部隊大学: チェチェン内に存在する特殊部隊の訓練施設。

カディロフツィは、その誕生から現在に至るまで、チェチェンおよび周辺地域において重要な役割を果たしており、その活動は軍事的な側面だけでなく、人権問題や政治的な側面からも注目されています。

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