カバマダラ

カバマダラ（樺斑）

カバマダラ（学名：Danaus chrysippus）は、タテハチョウ科に属する美しい蝶です。成虫は鮮やかなオレンジ色の翅を持っており、その体はスリムで黒地に白い水玉模様が印象的です。特に雄には、後翅の裏側に立体的な黒い模様が現れ、この特徴は性による識別ポイントとなります。また、日本に分布するマダラチョウ亜科の蝶の中では最も小型です。

生態と行動

カバマダラの成虫は、一般的に花で吸蜜する姿がよく見られます。これらの蝶は身体に毒を蓄えており、この毒は幼虫時代に摂取した有毒植物から影響を受けたものです。成虫になってもこの毒を保持し、捕食者に対しての警告として機能しています。特に、ツマグロヒョウモンやメスアカムラサキの雌は、カバマダラに擬態して自らの防御に役立てています。

また、カバマダラの卵は葉の裏や花に1つずつ産み付けられ、幼虫は主にキョウチクトウ科の植物を食草としています。これにはトウワタやフウセントウワタが含まれ、これらの植物を食べることで成虫としての栄養を蓄積します。カバマダラは越冬態が不定ですが、成虫はその生息地でも通年観察されることが多いです。

分布

この蝶はアフリカやインド、オーストラリアに広く分布していますが、日本では主に奄美大島以南の南西諸島に見られます。近年の温暖化の影響により、カバマダラは北へ進出しているようで、九州から四国や本州の太平洋側に記録されることも増えてきました。体が小さいため、時には台風の目を利用して移動することも観察されています。

カバマダラの存在は、美しい姿だけでなく、その生態や生息地を通じて自然界の中での相互作用を理解する上で重要です。そのため、蝶類を観察する愛好者や研究者にとって、非常に興味深い存在となっています。なお、観察する際はその特異な生態や植物との関係にも目を向け、彼らの生活を知ることが大切です。幼虫や成虫の活動を観察し、周辺環境の変化がどのように影響を及ぼすのかを考える良い機会ともなるでしょう。

参考資料

• - 牧林功解説、青山潤三写真『日本の蝶』成美堂出版、1994年。
• - 日本環境動物昆虫学会編 編『チョウの調べ方』文教出版、1998年。
• - 猪又敏男編・解説、松本克臣写真『蝶』山と溪谷社、2006年。
• - 福田晴夫ほか『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』南方新社、2009年。
• - 安田守『イモムシハンドブック』文一総合出版、2010年。

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