カプリビ回廊

カプリビ回廊：歴史と自然が交錯するナミビアの細長い領土

カプリビ回廊は、ナミビアの北東部に位置する、東西に約450kmにわたって細長く伸びた地域です。その独特な形状から、歴史的に様々な紛争の舞台となり、戦略的な重要性を持つと同時に、多様な文化と豊かな自然が共存する場所でもあります。

地理的特徴

回廊の南側はボツワナに、北側はアンゴラとザンビアに接しており、西部ではナミビアのカバンゴ州と繋がっています。クアンド川、リニヤンティ川、チョベ川、ザンベジ川といった主要な河川に囲まれ、地域最大の集落はカティマ・ムリロです。行政区分としては、東側がザンベジ州、西側が東カバンゴ州に分かれています。

多様な言語と文化

カプリビ回廊では、数多くの言語が話されています。その多くはバントゥー語群に属し、イェイ語、ムブクシュ語、ディリク語、フウェ語、トテラ語、スビヤ語などが使用されています。北西部ではコイサン語族のフクウェ語も話されています。地域における共通語はロジ語で、特に州都カティマ・ムリロで広く使われています。また、英語を話せる人も多く存在します。

地域の重要性と課題

カプリビ回廊は、豊かな野生生物が生息し、鉱物資源も確認されています。ナミビア政府は、ザンベジ川がアフリカ東海岸へのアクセスルートとなる可能性に注目していますが、河川の水位変動や急流、ビクトリア滝の存在、そして地域の政治的な不安定さが、その活用を困難にしています。しかし、近年ではエコツーリズムの可能性も模索されています。

歴史的背景

カプリビ回廊は、1890年にドイツの首相レオ・フォン・カプリヴィにちなんで命名されました。カプリヴィは、ドイツ領南西アフリカからアフリカ東海岸のタンガニーカへのルートを確保するため、ザンベジ川へのアクセスを得ることを目指し、この地域を併合しました。この併合は、ドイツがザンジバルの権益を放棄する代わりに、北海のヘルゴラント島とカプリビ回廊を得たヘルゴランド＝ザンジバル条約の一部として行われました。

カプリビ回廊は、その地理的特性から軍事的にも重要な役割を果たしました。1970年代の南ローデシア紛争、1960年代から1990年代にかけてのアフリカ民族会議による南アフリカ政府への抵抗運動、アンゴラ内戦など、周辺地域での紛争において、回廊としての役割を担い、絶えず武力行使と侵入が繰り返されました。1990年代後半には、独立を求める紛争（カプリビ紛争）も発生しています。

国境紛争と国際司法裁判所の判断

カプリビ回廊は、ナミビアとボツワナ間の国境線をめぐる長年の争いの舞台ともなりました。争点は、チョベ川の真の国境線がどの水路であるかという点にあり、川の中央にある大きな島（ナミビアではカシキリ島、ボツワナではセドウドウ島と呼ばれる）の帰属が焦点となりました。ボツワナ政府は、この島がチョベ国立公園の一部であると主張し、ナミビア政府は、カプリビ回廊東部の住民が、数世代にわたって季節的な牧草地やアシの採取地、埋葬地として利用してきたと主張しました。1999年12月、国際司法裁判所は、主要な水路を島の北側と定め、島はボツワナ領であると決定しました。

カプリビ回廊は、その複雑な歴史と多様な文化、そして豊かな自然が織りなす独特な地域です。紛争の歴史を乗り越え、平和と繁栄を実現するための努力が続けられています。エコツーリズムの発展や地域住民の生活向上など、今後の発展に期待が寄せられています。

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