カムイ (列車)

JR北海道の特急「カムイ」・「ライラック」：道央圏を結ぶ都市間輸送の主力

「カムイ」と「ライラック」は、北海道旅客鉄道（JR北海道）が札幌駅と旭川駅の間を函館本線経由で運行する特急列車です。道央圏の主要都市間を結び、ビジネスや観光など、多様なニーズに応えています。本記事では、これらの列車の概要、歴史、運行状況、使用車両などについて詳しく解説します。

概要

「カムイ」と「ライラック」は、共に札幌駅 - 旭川駅間136.8kmを最高速度120km/hで運行し、その所要時間は最短1時間25分。表定速度は96.6km/hに達し、日本の在来線特急の中でもトップレベルの速さを誇ります。2017年3月4日のダイヤ改正以降、現在の2つの愛称を使い分ける体制となりました。

「ライラック」には789系0番台電車（6両編成・半室グリーン車連結）が使用され、「カムイ」には789系1000番台電車（5両編成・普通車のみ、ただし指定席はuシート）が使用されています。2つの列車は、使用車両と車内設備に違いがあります。

札幌 - 旭川間は、高速バス「高速あさひかわ号」も運行されており、JR北海道はSきっぷなどの割引きっぷを発売するなどして、競争を繰り広げています。

列車名の由来

カムイ

「カムイ」の名称は、アイヌ語で神格を有する霊的存在を意味する「kamuy」に由来します。かつて運行されていた「スーパーカムイ」から「スーパー」を取り、現在の名称となりました。「スーパーカムイ」の名称は、789系1000番台の投入時に一般公募によって決定されました。公募では、「スーパーカムイ」と「カムイ」が1位・2位を獲得し、以前に同区間を走っていた急行列車で「かむい」の名称が使われていたことや、旭川市郊外の景勝地である神居古潭（kamuy-kotan：「カムイの住む村」の意）が旭川をイメージしやすいことが考慮されました。

ライラック

「ライラック」の名称は、札幌市の市木である植物のライラックに由来します。この名称は、「スーパーカムイ」が登場するまで運行されていた特急列車にも用いられていました。

運行概況

2024年3月16日現在、「カムイ」と「ライラック」は合わせて1日23往復運行されています。ただし、2021年3月13日のダイヤ改正以降、「カムイ」の2往復は土休日（お盆や年末年始などを含む）のみの運転に変更されています。2つの列車は交互に運転されるのではなく、旭川駅で特急「大雪」・「サロベツ」に接続する列車や、多客が予想される列車には、座席数が多くグリーン席のある「ライラック」が優先的に使用されます。

札幌駅 - 旭川駅間は、「カムイ」・「ライラック」の他に、石北本線直通の特急「オホーツク」（2往復）、宗谷本線直通の特急「宗谷」（1往復）が運行されており、特急列車が原則毎時2本（日中の一部時間帯と早朝・夜間は1本）運行されています。札幌駅を08:00、旭川駅を08:30に発車する列車以降、それぞれの始発駅の発車時刻は原則00分・30分に統一され、停車駅に毎時同時刻に発着するパターンダイヤが組まれています。

また、「オホーツク」・「宗谷」が運転されない日中の「ライラック」のうち4往復は、旭川駅で稚内駅発着の特急「サロベツ」2往復、網走駅発着の特急「大雪」2往復と同一ホームで接続しています。

2015年12月から2016年6月までの間、火災事故があった嵐山トンネル内で減速運転が行われていたため、1 - 2分の遅れが発生していました。通常時においても、特に冬期間は悪天候などによる減速運転が行われる影響で、定時より数分程度の遅れが生じることがあります。

停車駅（「カムイ」・「ライラック」共通）

札幌駅 - 岩見沢駅 - 美唄駅 - 砂川駅 - 滝川駅 - 深川駅 - 旭川駅

同区間を走行する「宗谷」・「オホーツク」は、一部の列車が美唄駅・砂川駅を通過します。

使用車両・編成

「カムイ」・「ライラック」ともに札幌運転所に所属する789系特急形電車が使用されていますが、前述のように愛称ごとに使用車両（番台）・編成内容が異なります。全列車が禁煙（喫煙ルームなし）です。

789系1000番台電車

特急「カムイ」に充当されます。2007年10月1日のエル特急「スーパーカムイ」登場時に導入された車両で、2017年3月3日までは編成内容がほぼ同一の785系電車との共通運用が組まれていました。グリーン席はなく、普通車のみの5両編成で、1・2号車が自由席、3・5号車が指定席、4号車は他の車両よりグレードの高い内装とした指定席「uシート」となっています。

789系0番台電車

特急「ライラック」に充当されます。元々は津軽海峡線の特急「スーパー白鳥」に使用され、2016年3月26日の北海道新幹線（新青森駅 - 新函館北斗駅間）開業に伴い、札幌都市圏へ転用されました。先頭車両の外装には編成ごとに札幌・空知・上川・旭川・宗谷・オホーツク各地方の観光素材をデザインしたラッピングが施されています。6両編成であり、1号車の旭川方半室がグリーン車指定席、その他は普通車で、1号車の札幌方半室と2 - 4号車が指定席、5・6号車が自由席となります。普通車は指定席・自由席とも内装は同一であり、1号車のみ座席種別に関わらず充電用コンセントが窓側に設置されています。

臨時列車

ライラック91号・97号

札幌ドームでのコンサート等の大規模イベント開催時に、観客輸送を目的として札幌駅発22時台（91号）・23時台（97号）に運行される臨時特急です。「スーパーカムイ」時代の2014年以降運行されていた「スーパーカムイ71号・81号」を引き継いだもので、コンサートの観客動員数や開催日程により1本または2本運行されます。コンサート観客だけでなく、一般の乗客も乗車可能です。使用車両は789系0番台で、1号車の一部はグリーン席、1号車の一部と2号車は指定席となります。

ライラック旭山動物園号

2017年夏季以降、「旭山動物園号」の後継として、「ライラック5・38号」（1往復）を運休扱いの上、特急「ライラック旭山動物園号」が運転される場合があります。使用車両・ダイヤは通常の「ライラック」と同一ですが、1号車のグリーン席は発売されず、記念撮影スペースとなり、着ぐるみで動物に扮したスタッフとの記念撮影が岩見沢駅～深川駅間の車内で行われます。旭山動物園内には「旭山動物園号ひろば」が設けられています。

沿革

「カムイ」・「ライラック」の前身となる列車は、戦後の1949年に運行を開始した不定期準急列車に遡ります。その後、列車名や運行区間の変更、特急への格上げなどを経て、現在の形となりました。かつては「ホワイトアロー」などの列車も運行されていましたが、2007年に「スーパーカムイ」に統合されました。2017年には「カムイ」・「ライラック」として再編され、現在に至ります。

今後の展望

JR北海道は、北海道新幹線札幌延伸後に在来線の改良による高速化を行い、札幌駅 - 旭川駅間の所要時間短縮（最速1時間25分から最速60分）を目指す構想を示しています。これにより、「カムイ」・「ライラック」は、道央圏の都市間輸送において、さらに重要な役割を担うことが期待されます。

もう一度検索