カリュベー

ギリシア神話に登場する「カリュベー（古希: Καλυβη, Kalybē）」という名前を持つ女性は複数存在しますが、特に知られているのは以下の2人です。

トローアスのニュムペー、カリュベー

1人目は、トロイア地方のニュムペー（妖精）とされるカリュベーです。彼女はトロイアの王ラーオメドーンとの間にブーコリオーンという息子をもうけました。ラーオメドーンは、トロイアの城壁を築いた際にポセイドンとアポロンに報酬を支払わなかったことで神々の怒りを買い、後にヘラクレスによって殺害されたことで知られています。この出来事は、トロイア戦争へと繋がる重要な伏線の一つとされています。カリュベーは、このような悲劇的な物語の中で、ラーオメドーンの妻として登場します。しかし、彼女の人物像や具体的な行動について詳しく語られることは少なく、その存在はラーオメドーンとの関係を通して語られることが多いです。

ディオニューソスの従者、カリュベー

2人目のカリュベーは、ディオニューソス神のインド遠征に従った女性の一人として登場します。ディオニューソスは、酒と豊穣の神として知られ、その熱狂的な信者たちと共に世界を旅しました。この遠征は、ディオニューソス神話の中でも重要な出来事の一つで、彼の神としての力を示す壮大な物語です。カリュベーは、この遠征に参加した女性の一人として描かれ、ディオニューソスの信者であるマイナスたちの集団に属していたと考えられています。彼女がどのような役割を果たしたのか、具体的な描写は多くはありませんが、ディオニューソスの祭儀や儀式に参加し、その熱狂を共有していたと考えられます。ディオニューソスの従者としてのカリュベーは、神の力を体現し、神聖な儀式に携わる役割を担っていました。彼女の存在は、ディオニューソスの神話における女性の役割を示す一例として捉えられます。

カリュベーという名前について

「カリュベー」という名前は、古代ギリシア語に由来し、その意味や語源については明確な結論は出ていません。しかし、彼女たちがそれぞれ異なる役割と物語を持っていることから、神話の中で「カリュベー」という名前が複数の人物に与えられたと考えられます。神話における名前の使い方は、単なる識別だけでなく、物語の象徴的な意味や登場人物の役割を示すことがあります。カリュベーの場合、それぞれの物語における彼女たちの関係性や役割を考慮することで、その意味を理解することができます。

参考文献

アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫（1953年）
高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店（1960年）

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