カリンガ国

カリンガ国は、古代インドの中東部に位置し、現在のオリッサ州とその周辺地域にあたる広大な領土を誇った国です。その領域は、ダーモーダル川からゴーダーヴァリ川にかけての肥沃な平野を含み、豊かな自然に恵まれていました。

カリンガ戦争とチェーティ朝

カリンガ国は、マガダ国と覇権を争う強国として知られていました。特に、紀元前265年に起こったカリンガ戦争は、マウリヤ朝のアショーカ王との間で繰り広げられた激戦として有名です。この戦争でカリンガ国はアショーカ王に敗北し、一時的にマウリヤ朝の支配下に入りました。

しかし、マウリヤ朝の力が衰えると、カリンガ国は再び独立を果たし、チェーティ朝が成立しました。チェーティ朝のカーラヴェーラ王は、カリンガ国で最も著名な王として知られています。彼はジャイナ教の信奉者であり、その普及に尽力しました。カーラヴェーラ王の治世下、カリンガ国は強大な海洋王国として繁栄し、その勢力はインド東部にまで及びました。ブヴァネーシュワルの碑文には、カーラヴェーラ王がマガダ国のラージャグリハを攻撃したことや、インド・グリーク朝のデメトリオス2世がマトゥラーまで退却したことが記されています。

この時期のカリンガ国は、スリランカ、ミャンマー、タイ、ベトナムなど東南アジア諸国との海上貿易も盛んに行いました。スリランカ、ミャンマー、インドネシアには、カリンガ人の集住区が形成され、マレーシアでは現在でもインド人のことを「カリング」と呼ぶ習慣が残っています。

ジャフナ王国との関係

スリランカ北部のジャフナを拠点とするジャフナ王国は、13世紀にカリンガ・マーガ王の軍勢によって建国されました。ジャフナ王国は、その由来をカリンガ国に求めており、カリンガ国から渡海した人々によって築かれたとされています。

言語と文字

カリンガ国では、ブラーフミー文字から派生したカリンガ文字が使用されていました。この文字は、ドラヴィダ語族の言語を表記するために使われていたと考えられており、カリンガ国ではドラヴィダ語族の言語が有力だった可能性があります。カリンガ文字は、後に変形と融合を経て、11世紀頃にオリヤー文字となり、現在に至っています。

文献にみるカリンガ国

カリンガ国は、叙事詩『マハーバーラタ』にも登場します。カリンガ国王シュルターユは、カウラヴァ百王子側に味方してバラタ大戦争に参加しました。

また、メガステネースが著したインドに関する書物にも、カリンガ国（Calingae）が紹介されており、マガダ国とともにジャイナ教が最も栄えている王国として記述されています。

さらに、タミル古代文学のサンガム文学においては、「カリンガ」（கலிங்கம்）という言葉は結婚式などで着用する上質な綿織物を指しています。これは、カリンガ国で生産された綿織物が高級品として珍重されていたことを示唆しています。

カリンガ国は、古代インドの歴史において、政治、文化、経済など様々な側面で重要な役割を果たした国でした。その興亡は、古代インド史を理解する上で欠かせない要素となっています。

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