チェーティ朝

チェーティ朝

チェーティ朝は、紀元前2世紀頃に古代インドのカリンガ国（現在のオリッサ州）で成立した王朝です。この王朝に関する情報は、特にカーラヴェーラ王時代の碑文によって多く知られています。チェーティ朝は、カリンガ地方の歴史において重要な役割を果たしました。

歴史的背景

紀元前259年頃、カリンガ国はアショーカ王の遠征によってマウリヤ朝の支配下に入りました。しかし、マウリヤ朝の衰退とともにカリンガ国は再び独立を果たし、紀元前2世紀頃にチェーティ朝が成立しました。王朝の成立過程については詳しい記録が残っておらず、初代と2代目の王については不明な点が多いです。また、パーリ語仏典に登場する「チェディ」や「チェータ」といった王朝との関係も明確ではありません。

カーラヴェーラ王の治世

チェーティ朝の第3代王とされるカーラヴェーラ王（紀元前2世紀頃または紀元前1世紀頃）の治世については、多くの碑文が残されており、その事績を知ることができます。彼は軍事的な遠征を積極的に行い、その勢力を拡大しました。サータヴァーハナ朝に対抗してヴィンディヤ山脈以南の南インドを征服し、ガンジス川方面ではマガダ国のラージャグリハ（王舎城）まで到達したとされています。一説には、ネパール方面まで勢力を拡大したとも伝えられています。また、ガンジス川流域に侵入していたグレコ・バクトリア王国のデメトリオス2世は、カーラヴェーラの進撃の報告を受けて軍を引き返したという説もあります。

カーラヴェーラ王は、その強大な力から「カリンガ国の聖帝（転輪聖王）」や「法の王」など、多くの尊称で呼ばれました。彼の治世下でチェーティ朝は全盛期を迎えましたが、カーラヴェーラ王の死後、王朝は徐々に衰退したと考えられます。しかし、記録が少ないため、その後の詳細は不明な点が多いです。

マハーメーガヴァーハナ

カーラヴェーラ王の碑文には、「マハーメーガヴァーハナ」という呼称が用いられていることがあります。これは、サータヴァーハナ朝のように王家の名前であると考えられ、「マハーメーガの裔」または「マハーメーガヴァーハナの裔」と解釈されています。プラーナ文献には、コーサラ国にメーガと呼ばれる9人の賢王がいたという記述があり、彼らとの関連性も指摘されています。

まとめ

チェーティ朝は、紀元前2世紀頃にカリンガ国で成立し、カーラヴェーラ王の時代に最盛期を迎えました。彼の治世下での軍事的な拡大は目覚ましく、南インドからガンジス川流域にまで影響力を及ぼしました。しかし、詳細な記録が少ないため、不明な点も多く残されています。

参考資料

* 『中村元選集[決定版] 第7巻 インド史III』（中村元 春秋社 1998年）

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