カルガモ

カルガモ（軽鴨）

カルガモ（学名: Anas zonorhyncha）は、カモ目カモ科マガモ属に分類される鳥類で、東アジアに広く分布しています。日本では、その身近な姿から親しまれているカモの一種です。

分布

カルガモは、中国、日本、アムール地方、朝鮮半島に分布しています。日本では主に本州以南に周年生息していますが、北方で繁殖する個体は冬季に暖地へ移動することもあります。和名の由来は、かつて「軽の池」（現在の奈良県橿原市大軽周辺とする説があります）で夏にも見られたことに由来すると考えられています。

形態

カルガモは、全長51.5 - 64.5cmで、オスの方がやや大きいです。翼長はオスで25.4 - 27.6cm、メスで24.3 - 26cmです。頭頂部や背中、腰は黒褐色をしています。翼の次列風切には青紫色の光沢があり、その縁には小さな白い部分があります。オスは腹部が濃い褐色で、羽毛の縁の淡色部が小さく、胸部との色の違いがはっきりしています。尾羽の付け根を覆う羽毛は光沢のある黒色です。一方、メスは胸部と腹部の色の違いがあまりなく、尾羽の付け根を覆う羽毛は黒褐色で、縁が淡色だったり、淡色の斑紋が入ったりします。

分類

以前は、Anas poecilorhynchaという種の中に、カルガモを亜種A. p. zonorhynchaとして分類していました。しかし、2016年以降、Birdlife International、Clements Checklist、IOC World Bird Listなどの主要な鳥類分類リストでは、カルガモを独立した種として扱っています。

生態

カルガモは、河川、湖沼、湿地、干潟、水田などに生息します。渡りは行いませんが、北方に生息する個体群は冬季に南下することがあります。主に夜間に採餌し、植物の葉や種子を主食としますが、ゲンゴロウなどの水生昆虫やタニシなどの貝類、ワカサギなどの魚類も食べます。過去には、オイカワを30尾も食べていた個体が報告されています。

繁殖形態は卵生で、集団繁殖地（コロニー）を形成することもあります。草や枯れ草、ササなどを組み合わせて皿状の巣を作り、10 - 14個の卵を産みます。抱卵期間は26 - 28日です。谷津干潟では、子連れのメスが他の個体の雛やオカヨシガモの雛を殺した例が報告されており、繁殖地の高密度化が原因で親鳥が攻撃的になったと考えられています。

人間との関係

カルガモは、イネなどの農作物を食害したり、水田を踏み荒らして種籾を埋没させ、発芽率を低下させることがあるため、害鳥とみなされることもあります。

食用としては、雑食性のため肉に臭みが出やすい傾向がありますが、マガモに比べて極端に味が劣るわけではありません。植物食の傾向が強い時期の肉は美味とされ、狩猟鳥として人気があります。毎年20数万羽が撃ち落とされていると言われています。

近年、カルガモと飼育されていたマガモやアヒルが交雑した事例が各地で報告されています。特に、放し飼いのアヒルやアイガモとの交雑が多く見られるようになり、遺伝子汚染が懸念されています。都市部では、アヒルとの雑種化が進み、人を恐れない行動をとるカルガモが増加しています。また、照明の多い都市部では夜間に飛翔する個体もいます。

カルガモの引っ越し

1984年以降、東京都千代田区大手町の三井物産ビルのプラザ池から皇居和田倉堀へ引っ越すカルガモの親子がメディアに取り上げられ、ブームとなりました。三井物産では、1998年から2013年まで女性社員がカルガモレディとして池に営巣するカルガモを観察し、記録していました。プラザ池はビルの再開発のため2013年に閉鎖されましたが、2021年3月までに新たな池が整備される予定です。

その他

一列に並んで歩く親子の様子から、道路上を複数の車両が密接に連なって走行することや、料金所を不正に通過する行為を「カルガモ走行」と呼ぶようになりました。

1994年から2014年まで販売された90円普通切手の意匠にもなりました。

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