カワガラス

カワガラス（河烏、川鴉）

カワガラス（学名：Cinclus pallasii）は、スズメ目カワガラス科に属する鳥類です。急流や渓流を好んで生息し、水中で餌を探す独特な生態を持っています。

分布

カワガラスは、ヒマラヤ北部からインドシナ半島北部、中国、台湾、サハリン、日本、カムチャツカ半島にかけて広く分布しています。これらの地域では基本的に留鳥として、一年を通して同じ場所に生息しています。

日本では、北海道から九州、屋久島まで広く分布しており、河川の上流から中流域、山地の渓流で見られます。

形態

カワガラスの全長は21-23cm程度で、ヒヨドリやツグミよりやや小さいです。体重は65-90g程度。全身が濃い茶色（チョコレート色）の羽毛で覆われており、これが名前の由来となっています。尾羽は短く、黒味がかった焦茶色をしています。目は茶色で、目を閉じると白いまぶたが目立ちます。雌雄同色です。

くちばしは黒く、足は灰色でがっしりとしています。ミソサザイを大きくしたような体型で、短めの尾羽を立てた独特の姿勢をとることがあります。幼鳥は喉から腹にかけて白くて細かいうろこ模様があります。

生態

カワガラスは、平地から亜高山帯の川の上流から中流にかけての岩石の多い沢に生息します。冬期には、積雪を避けて下流側に移動することもあります。一年を通して単独または番いで行動し、群れを形成することはありません。ただし、つがい形成期には、まれに一夫二妻の行動が見られることがあります。

「ピッピッ」と鳴きながら、速い羽ばたきで川面の上を直線的に飛びます。また、頑丈な脚で岩をつかみ、水流の圧力を利用して川底を歩きながら水中で餌を探します。尾羽を上下に動かしたり、風切羽を半開きにしたり、まばたきをして白いまぶたを見せながら、石や流木の上で休息する姿もよく見られます。

食性

カワガラスは動物食で、水に潜ってカゲロウやカワゲラなどの幼虫などの水生昆虫、カニなどの甲殻類、小魚などを捕食します。水面上を泳ぎながら首を水中に入れて覗き込み、頻繁に潜水します。水中では川底を這うように歩き回って餌を探し、「渓流の素潜り名人」と称されることもあります。水中に潜っているときは、羽毛の間に空気が含まれるため、全身が銀色に見えます。

生活史

カワガラスは他の鳥に比べて繁殖を始めるのが早く、12月頃からオスがさえずり縄張り宣言を始めます。暖地では1月頃から繁殖を始めることもあります。滝の裏の岩の隙間にコケや植物の根で半球状のドーム形の巣を作ります。岩の陰やコンクリート護岸の排水口、橋桁などの人工物にも巣を作ることがあります。造巣の際の雌雄の貢献度はほぼ等しく、分業は行われません。

日本では2-6月に1腹4-5個の卵を産みます。抱卵日数は15-16日で、主に雌が抱卵します。育雛は雌雄共同で行い、雛は21-23日で巣立ちます。雛は飛べないうちから、水中を泳いだり歩くことができます。

鳴き声

オスは12月頃の繁殖期から「ピピピ チュシュ ピッピッ ピュュ」と鳴き始めます。また、セグロセキレイに似た濁った声で「チーチージュピチリリ」と複雑に鳴くこともあります。地鳴きは「ピッ ピッ」と聞こえます。

保全状況

国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストでは、軽度懸念（LC）として指定されています。しかし、日本では河川開発などにより個体数が減少している地域もあり、都道府県によってはレッドリストに指定されています。

人間との関わり

カワガラスは、その美しい姿とユニークな生態から、多くの人々に親しまれています。若山牧水の歌やアイヌの神謡にも登場し、文化的な存在としても知られています。

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