カワゴケソウ科

カワゴケソウ科（Podostemaceae）は、双子[[葉植物]]に属する、すべて水草からなる特異な科です。世界に約50属270種が分布し、主に熱帯・亜[[熱帯]]地域に生育していますが、アメリカ東岸の北緯50度付近にも分布する種が存在します。

特徴

カワゴケソウ科の植物は、急流域の岩盤や川底に固着して生育します。その形態は著しく退化しており、根は苔類のような葉状体となり、この根でも光合成を行います。日本に分布する種は茎がほとんどなく、葉状体上に鱗片状の葉と単純な花をつけます。多くの種は水中で開花するという特徴を持っています。

分布と多様性

カワゴケソウ科の植物は、種子の散布を河川に依存するため、水系ごとに固有種が多い傾向にあります。日本では、カワゴケソウ属（Cladopus）とカワゴロモ属（Hydrobryum）の2属8種が確認されています。これらの種は、宮崎県、鹿児島県本土、および屋久島の一部河川に分布しています。特にオオヨドカワゴロモ（H. koribanum）は、1999年に新種として確認された固有種で、大淀川水系の岩瀬川にのみ生育しています。また、タシロカワゴケソウ（Cladopus austro-osumiensis）も、1977年に発見されたものの、正式な新種として記載されたのは1995年と、比較的新しい種です。

分類

カワゴケソウ科は、その特異な形態から、かつては系統が不明確でした。クロンキスト体系では独立のカワゴケソウ目に分類されていましたが、近年の分子系統学的研究により、オトギリソウ科に近縁であることが判明しました。そのため、APG植物分類体系では、キントラノオ目に分類されています。

日本に分布する属

日本には、以下の2属が分布しています。

カワゴケソウ属（Cladopus）：カワゴケソウ、タシロカワゴケソウ、トキワカワゴケソウ、マノセカワゴケソウ
カワゴロモ属（Hydrobryum）：カワゴロモ、ウスカワゴロモ、オオヨドカワゴロモ、ヤクシマカワゴロモ

その他の属

カワゴケソウ科には、以下のような属も含まれます。

Angolaea, Apinagia, Butumia, Castelnavia, Ceratolacis, Cipoia, Crenias, Dalzellia, Devillea, Diamantina, Dicraea, Dicraeanthus, Diplobryum, Djinga, Endocaulos, Farmeria, Hydrobryopsis, Hydrostachys, Indotristicha, Jenmaniella, Lawia, Ledermanniella, Leiothylax, Letestuella, Lonchostephus, Lophogyne, Macrarenia, Macropodiella, Malaccotristicha, Marathrum, Monostylis, Mourera, Oserya, Paleodicraeia, Podostemum, Polypleurella, Polypleurum, Rhyncholacis, Saxicolella, Sphaerothylax, Stonesia, Thelethylax, Torrenticola, Tristicha, Tulasneantha, Weddellina, Willisia, Winklerella, Zehnderia, Zeylandium

保護上の位置づけ

カワゴケソウ科の植物は、その生育環境の特異性から、保護の必要性が高いとされています。日本では、1954年に鹿児島県の天然記念物に指定され、カワゴケソウ、トキワカワゴケソウ、マノセカワゴケソウ、カワゴロモ、ウスカワゴロモ、ヤクシマカワゴロモの6種が対象となっています。また、環境省のレッドデータブックでは、日本に生育するカワゴケソウ科の2属8種全てが、絶滅危惧IA類または絶滅危惧IB類に指定されており、絶滅の危険性が極めて高い状況です。

特に、2010年には、カワゴケソウとウスカワゴロモが生育する鹿児島県志布志市の安楽川と前川の生育地が、また、ヤクシマカワゴロモが生育する屋久島町の一湊川と白川の生育地が、それぞれ国の天然記念物に指定されました。さらに2016年には、宮崎県小林市の岩瀬川にのみ生育するオオヨドカワゴロモの自生地も国の天然記念物に指定され、厳重な保護が求められています。

カワゴケソウ科