カーニング

カーニングとは

カーニングとは、主に欧文の組版において、プロポーショナルフォントの文字同士の間隔を調整する技法のことです。カーニングを行わない場合、文字の間に不自然な空白が生じ、読みづらくなってしまいます。適切にカーニングが施されたフォントでは、文字間の空白面積がほぼ均等になり、自然で美しい見た目になります。

カーニングの重要性

カーニングは、文字の形状に合わせて個別に文字間の距離を微調整するタイポグラフィ手法であり、審美的な側面と印刷物の読みやすさという実利的な側面を併せ持ちます。特に、見出しなどの大きな文字では、カーニングの重要性が高まります。日本語や中国語など、各文字がほぼ正方形の枠に収まる言語の本文では、カーニングが用いられることは少ないですが、見出しなどで大きめの文字を用いる場合は詰め組みが行われることがあります。

カーニングの手法

かつて活字を用いて印刷する場合は、活字に特殊な加工が必要となるため、カーニングは労力と費用を要する作業でした。しかし、写真植字やDTPの普及により、カーニングは格段に容易になりました。現在では、組版ソフト上でカーニングを行うのが一般的です。

カーニングは、文字の組み合わせの形状に合わせて、その都度異なる間隔を設定するものです。一律に間隔を変える「トラッキング」や「字送り」とは区別されます。

カーニングやトラッキングの強弱は、「タイト（tight）」・「ルーズ（loose）」と表現されます。タイトな詰め方の極限は、字形同士が接触する「タッチング（touching）」と呼ばれる状況であり、これが文字詰めの限界です。本文に用いるには詰め過ぎですが、見出しやロゴタイプなどで印象的なタッチングの用法が見られます。

カーニングのデメリット

カーニングには、読みやすさを向上させるというメリットがある一方で、デメリットも存在します。カーニングを施すことで、光学文字認識ソフトウェアにとっては文字の境界が判別しづらくなり、認識精度が低下する可能性があります。特にタイトな組み方では、エラー率が10％を超えるという報告もあります。

活版印刷におけるカーニング

活版印刷においては、活字は四角形のボディを持っており、そのままでは字面はボディの枠を越えて互いに近づくことができません。しかし、例えば小文字の「f」や大文字の「T」などでは、文字の右上に延びた箇所の下に次の文字や約物を入れなければ、その箇所に不格好な空白が生じることになります。そこで、字面の下のボディを削るなどして、字面をボディから浮かせる方法が取られました。活字のボディから浮いた字面の一部を「カーン（kern）」と呼びます。

また、活字の一角を切り落とし、向かい合う角を切り落とした他の活字と隣り合わせて字面を近づける手法もありました。この作業に特化したタイプモーティサーと呼ばれる機械も存在しましたが、手間を要するため、スピードが要求される印刷では用いられませんでした。

別の方法として、頻繁に登場する組合せを合字とし、一つの活字としてあらかじめ用意する方策も一般的に行われました。活版印刷の成立初期には合字が必要な組合せは現在よりも多かったですが、やがて字形が整えられていくうちにカーニングの必要性の少ない方向に発展し、「fi」「fl」などの代表的な組合せだけが残りました。

カーニングの自動化

近年の高品質な欧文フォントは、カーニングに関する情報をあらかじめ持っている場合が多く、この機能に対応したソフトでは自動的にカーニングが行われます。これを「メトリクスカーニング（metrics kerning）」と呼びます。

メトリクスカーニングがなされない状況であっても、組版ソフトが自動カーニング機能を備えていることがあります。これは、文字の形状を解析し、最適な文字間隔を自動的に算出するアルゴリズムによって行われ、「オプティカルカーニング（optical kerning）」と呼ばれます。

自動カーニングは手軽で便利な技術ですが、手動カーニングに劣る場合もあります。空白を判断するアルゴリズムにとって空白が十分に小さくても、実際接近しているのはダイアクリティカルマークに過ぎず、人間の目には空白が大きすぎるように見えるなどといったケースが考えられるからです。

ウェブブラウザにおけるカーニング

一部のウェブブラウザは、OpenTypeフォントのメトリクスカーニング機能を利用できます。この分野においてカーニングは未だ目新しい機能であり、それを制御するためのマークアップ方法もブラウザ側の対応状況もまちまちです。

タイプライターにおけるカーニング

一般的なタイプライターの活字は等幅であり、1文字の打鍵ごとに紙が送られる量も一定です。したがって、タイプライターで打たれた文字にカーニングは存在せず、それが施されているように見える場合は、ワードプロセッサなどによる擬似的な「タイプライター風」の書類だと認識される場合があります。

カーニングをゲームで体験

カーニングの作業をゲームにしたWebサイト "Kern Type, the kerning game" があります。プレイヤーは画面に表示された文字をキーボードやマウスで動かし、理想的とされる結果と比較されて採点されます。一般的に知られていない専門的な作業をゲームとしてエンターテインメントに転化させた例であり、デザイナーにとっても自らの技量を確かめることのできるコンテンツとして取り上げられています。

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