ガイウス・マリウス (紀元前82年の執政官)

ガイウス・マリウス（小マリウス）

ガイウス・マリウス（ラテン語: Gaius Marius, 紀元前109年/紀元前108年 - 紀元前82年）は、共和政ローマ後期の政務官であり、名将ガイウス・マリウス（大マリウス）の息子です。父と区別するため、小マリウス（Marius Minor）とも呼ばれます。ルキウス・コルネリウス・スッラとの内戦で敗北し、その生涯を閉じました。

生涯

紀元前108年、大マリウスとユリア・カエサリアの間に生まれました。法務官マルクス・マリウス・グラティディアヌスは父方の従兄弟、独裁官ガイウス・ユリウス・カエサルは母方の従兄弟、執政官クィントゥス・ムキウス・スカエウォラ・アウグルは母方の祖父にあたります。後に元老院議員ルキウス・リキニウス・クラッススの娘で、同じスカエウォラ・アウグルの孫にあたるルキニアと同族婚を結んでいます。幼馴染にはティトゥス・ポンポニウス・アッティクスとマルクス・トゥッリウス・キケロがおり、キケロは父と同じアルピヌム出身です。

父の大マリウスは、キンブリ・テウトニ戦争での勝利によって民衆の支持を集め、小マリウスもその後継者として育てられました。支持者からは軍神マルスの子と持ち上げられましたが、実際には父に比べて軍事的な才能は劣っていたようです。プルタルコスによれば、小マリウスは美男子として知られており、むしろ女神ウェヌスの子（「女たらし」という意味の隠語）と言われたそうです。

紀元前88年、スッラがミトリダテス戦争の指揮権剥奪に不満を抱き、軍団を率いてローマへ侵攻し、マリウス派とスッラ派の内戦が勃発しました。小マリウスは内戦中、スッラがローマを占領した際、父の命令で祖父スカエウォラの元へ物資を取りに向かいましたが、輸送に手間取って追手に捕らえられそうになり、やむなく単身でアフリカ属州へ亡命しました。

アフリカでは、かつて父がユグルタ戦争で戦ったヌミディア王国のヒエムプサル2世に庇護されましたが、実際には殆ど人質のような扱いを受け、宮殿から出ることも許されませんでした。その後、ヒエムプサル2世の妻を篭絡してヌミディアから逃れる手助けを受け、父と合流してケルキラ島に身を隠しました。紀元前87年、父がローマでスッラに反旗を翻した執政官ルキウス・コルネリウス・キンナから執政官代理に指名されると、マリウス父子はイタリアに上陸し、ローマを制圧しました。

その後、マリウスとキンナが相次いで死去し、紀元前82年に小マリウスは法定年齢である43歳に達していないにもかかわらず、大マリウスの威光を頼って26歳で執政官に選出され、グナエウス・パピリウス・カルボを同僚執政官としました。同年、ローマへ再進軍するスッラ軍とサクリポルトゥスで戦いましたが敗北し、プラエネステへ退却して籠城しました。しかし、スッラ軍のレガトゥス（総督代理）であったクィントゥス・ルクレティウス・オフェッラによって包囲され、陥落時に自害ないしは処刑されました。小マリウスの首を検分したスッラは、規定年齢に達せず執政官となった事を「オールの使い方も知らずに船長になってはいかんな」と皮肉ったと言われています。

後に従兄弟であるユリウス・カエサルが暗殺された後、小マリウスの遺児を名乗るヘロピルス(アマティウス)なる人物が現れて民衆を扇動しましたが、執政官だったマルクス・アントニウスによって処刑されました。

小マリウスの生涯は、父の威光を背景に、若くして政権の座についたものの、内乱の激動の中で翻弄され、悲劇的な最期を迎えた人物として、ローマ共和政末期の混乱を象徴しています。

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