ガット・ライヴ・イフ・ユー・ウォント・イット!

ローリング・ストーンズの1966年発表作品『ガット・ライヴ・イフ・ユー・ウォント・イット!』は、バンドのライブ・アルバムとして長らく認識されてきましたが、複雑な経緯を持つ作品です。アメリカ合衆国のレコード会社、ロンドン・レコードの要請により編集・リリースされたこのアルバムは、実際にはバンドメンバー自身による公式なライブ・アルバムとはみなされていません。彼らが自身の公式ライブ・アルバムとして認めているのは、1970年発表の『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』です。

本作のタイトルは、1965年にイギリスでリリースされたEPと同一です。収録されている演奏は1966年10月上旬、ニューカッスル・アポン・タインとブリストルで行われたライブ音源が使用されていますが、ジャケットにはロイヤル・アルバート・ホールでのライブと記載されています。しかし、重要な点は、このアルバムが完全なライブ音源ではないということです。「恋をしすぎた」と「フォーチュン・テラー」は、スタジオ録音にライブの観客の歓声を後から重ねたものであり、他の曲もボーカルが録り直されている部分が多いのです。そのため、厳密にはライブ・アルバムとは呼べないと言えるでしょう。

さらに、リリース当初とその後で音源に違いが見られます。初期リリース盤では、「恋をしすぎた」と「フォーチュン・テラー」はフェードアウト処理が施されていましたが（「恋をしすぎた」はステレオ盤のみ。モノラル盤は完奏）、1986年のアブコ・レコードによるリマスターでは、両曲とも途中で演奏が途切れるように編集されました。また、「アンダー・マイ・サム」の前にあるナレーションも、別テイクのものが長く収録されています。さらに、マスターによっては、最後の曲「サティスファクション」の後に、ストーンズとは無関係な「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」が収録されているものもあります。興味深いことに、「恋をしすぎた」と「フォーチュン・テラー」のリマスターでフェードアウトが修正されているにもかかわらず、「サティスファクション」はリマスター以前からフェードアウト処理がされています。

本作はアメリカで発売され、チャートでは6位にまで上昇し、ゴールドアルバムを獲得しました。その後、2002年にはアブコ・レコードからリマスター版がSACDとのハイブリッドCDとして再発されています。

収録曲を見ると、主にジャガー/リチャードの作詞作曲による楽曲が並んでいますが、「ノット・フェイド・アウェイ」はバディ・ホリーとノーマン・ペティの作品、「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」はノーマン・ミードの作品で、ストーンズ独特の解釈が加えられています。「恋をしすぎた」と「フォーチュン・テラー」は、前述の通り、1965年と1963年のスタジオ録音にライブの歓声を重ねたものです。

このように、『ガット・ライヴ・イフ・ユー・ウォント・イット!』は、単純なライブアルバムという枠組みでは捉えられない、複雑な歴史と制作過程を持つ作品と言えるでしょう。アメリカでの人気を反映した商業的な側面と、バンド側の公式見解との相違も興味深い点です。このアルバムは、ローリング・ストーンズの初期の歴史における重要な位置を占める一方、その真の姿を知るためには、このような背景を理解する必要があると言えるでしょう。

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