ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト

ローリング・ストーンズのライブアルバム『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』(Get Yer Ya-Ya's Out! The Rolling Stones in Concert)は、1970年のリリースと同時に、バンドにとって大きな転換点となる作品となりました。

それまでのストーンズは1967年4月以来、ツアー活動を休止していましたが、高い評価を得た『ベガーズ・バンケット』と『レット・イット・ブリード』の成功を受け、1969年にツアー再開を決断します。このツアーは、ブライアン・ジョーンズの後任としてミック・テイラーが参加した初めてのツアーでもあり、北米各地を巡りました。サポートアクトには、B・B・キングとアイク＆ティナ・ターナーという豪華な面々も名を連ねています。

アルバムに収録されているのは、1969年11月27日と28日、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで行われた4公演の音源です。これらの公演は、全て録音と撮影が行われており、その一部は後に映画『ギミー・シェルター』にも使用されています。アルバムのタイトル『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』は、ブラインド・ボーイ・フラーの楽曲「Get Yer Yas Yas Out」に由来すると言われています。

興味深いのは、このアルバムがブートレグ対策としてリリースされたという点です。1969年のツアー公演を収録したブートレグが当時出回り、大きな話題となっていたことを受け、バンドとレコード会社は公式にライブアルバムを発売することを決めたのです。

当初は、B・B・キングやアイク＆ティナ・ターナーの演奏も含めた複数枚組アルバムとしてリリースする計画もあったようですが、様々な事情により、当初は1枚組での発売となりました。しかし、2009年の40周年記念デラックス・エディションでは、この当初の構想が実現し、B・B・キングとアイク＆ティナ・ターナーの演奏も収録された3枚組CDとして再発売されています。さらに、未発表のライブテイクやライブ映像を収録したDVDも同梱され、ファンにとって垂涎のボックスセットとなりました。

音楽的な面では、ピアノやギターソロ、ボーカルなどにオーバーダビングが施されていることも特徴です。このオーバーダビングの様子は、先に述べた映画『ギミー・シェルター』で垣間見ることができます。また、アルバムの冒頭には、司会者のMCも収録されており、当時のライブの雰囲気をよりリアルに伝えています。

ジャケットデザインはジョン・コッシュとスティーヴ・トーマス・アソシエイツによるもの。デッカ/ロンドンからの最後のオリジナルアルバムとなり、次作からはストーンズ自身のレーベル、ローリング・ストーンズ・レコードからのリリースとなりました。

2002年にはアブコ・レコードからリマスターされたSACD/ハイブリッドCDとして再発され、2009年のデラックス・エディションと合わせて、現在でも多くのファンに愛され続ける作品となっています。ローリング・ストーン誌が選ぶ「オールタイム・グレイテスト・ライヴ・アルバム50」では、17位にランクインするなど、高い評価を得ています。

収録曲は、ストーンズの代表曲からブルースのカバーまで、多彩な選曲となっています。特に、デラックス・エディションでは、サポートアクトの演奏や未発表ライブテイクが追加され、ストーンズの1969年のツアーの全貌をより深く理解できる内容となっています。これらの楽曲は、当時のストーンズの勢いを感じさせるものばかりであり、今もなお多くのリスナーを魅了し続けています。

このアルバムは、単なるライブアルバムとしてだけでなく、ローリング・ストーンズの音楽史における重要な作品であり、彼らのライブパフォーマンスのエネルギーと才能を余すことなく伝えてくれる、まさに伝説的な一枚と言えるでしょう。

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