ガンランチャー

ガンランチャー

ガンランチャーとは、砲弾と対戦車ミサイルの双方を発射可能な大口径砲のことです。特に、1950年代から1970年代にかけて、アメリカを中心に研究・開発が行われました。「ガン/ランチャー」と表記されることもあります。

概要

1950年代、アメリカはソ連製戦車の装甲強化に対抗するため、従来の徹甲弾では撃破が困難になるという危機感を抱いていました。そこで注目したのが、成形炸薬弾（HEAT）です。HEAT弾は口径が大きいほど装甲貫徹力が増すという特性がありましたが、大口径化すると砲弾の重量が増加し、射程距離が短くなるという問題がありました。

そこで、自己推進能力を持つ対戦車ミサイルを戦車に搭載するというアイデアが浮上しました。対歩兵・陣地用の榴弾を発射する大口径・短砲身の火砲をミサイル発射機として兼用するガンランチャーが開発されることになったのです。

1960年代には、アメリカで152mm口径のM81ガンランチャーと、専用のMGM-51 シレイラ対戦車ミサイルが開発され、M551シェリダン空挺戦車に搭載されました。ベトナム戦争にも実戦投入されましたが、ミサイル技術の流出を懸念して、実際にはミサイルはほとんど運用されませんでした。また、当時の主力戦車M60パットンに搭載したM60A2も少数生産されました。

同時期にフランスも142mm口径のガンランチャーから運用されるACRA対戦車ミサイルを開発し、AMX-30戦車やAMX-10P歩兵戦闘車をベースとする試作車に搭載しましたが、ミサイル価格の高騰により量産化はされませんでした。

1970年代には、西ドイツとの共同開発計画であるMBT-70においても、ガンランチャーの採用が議論されました。西ドイツ側が120mm滑腔砲の搭載を主張したのに対し、アメリカ側はガンランチャーにこだわったことが、計画頓挫の一因となりました。加えて開発費の高騰も問題視されました。

最終的に、M551シェリダンの運用実績から、ガンランチャーはシステムが複雑で信頼性に欠け、実用的ではないと判断されました。APFSDS（装弾筒付翼安定徹甲弾）などの強力な戦車砲弾が登場したこともあり、ガンランチャーは廃れ、M1エイブラムスには120mm滑腔砲が採用されることになりました。

ソ連の動向

一方、ソ連でも1962年から1964年にかけて、D-126 125mm施条ロケット砲を装備するオブイェークト775が試作されました。実戦配備には至りませんでしたが、ロケット推進式の低圧砲はBMP-1をはじめとする歩兵戦闘車に広く採用されました。BMP-3の100mm低圧砲2A70は、9M117対戦車ミサイルを発射可能なガンランチャーとして機能します。

現在の状況

現在では、戦車砲の大口径化やミサイルの小型化が進み、イスラエルのLAHATやロシアの9M119のように、通常の戦車砲から発射可能な対戦車ミサイルが登場しています。技術の進歩により、ガンランチャーとは逆のアプローチでミサイル運用が可能になったと言えるでしょう。

ガンランチャー搭載戦車

M551シェリダン
M60A2
MBT-70（アメリカ仕様）
M41軽戦車 - M551の砲塔を搭載して試験を実施

関連項目

MGM-51 シレイラ
LAHAT
* 9M119 (AT-11 スナイパー)

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