MBT-70

MBT-70/KPz.70：幻の次世代主力戦車

MBT-70/KPz.70は、1960年代にアメリカ合衆国と西ドイツが共同で開発を目指した次世代主力戦車です。当時の主力戦車を凌駕する性能を目指し、革新的な技術が多数盛り込まれましたが、両国の設計思想の違いや開発費の高騰により、最終的に開発は中止されました。しかし、その開発で得られた技術やコンセプトは、後の主力戦車であるM1エイブラムスやレオパルト2の開発に大きな影響を与えました。

開発の背景

1960年代初頭、アメリカはM60パットンの後継となる次世代主力戦車の開発に着手しました。一方、西ドイツもレオパルト1の開発を進めていましたが、ソ連の新型戦車に対抗するため、より高性能な戦車の必要性を感じていました。両国の思惑が一致し、開発費削減のためNATO諸国との共同開発が模索される中、アメリカと西ドイツが共同で次世代戦車を開発することで合意しました。

1963年8月1日、正式な開発協定が締結され、MBT-70（アメリカ）/KPz.70（西ドイツ）と呼ばれる共同開発プロジェクトがスタートしました。

開発の難航

1964年9月から本格的な開発が始まりましたが、当初から両国の間で意見の対立が頻発しました。設計単位にヤード・ポンド法を使うかメートル法を使うか、主砲のシステムをアメリカ側のガンランチャー方式にするか西ドイツが開発した滑腔砲方式にするかなど、あらゆる面で意見が衝突しました。その結果、両国の案を盛り込む妥協策が採られ、開発期間は延び、開発費は高騰していきました。

試作車の製作は1965年に開始され、1968年には完全な試作車が完成しました。テストの結果、MBT-70/KPz.70はM60やレオパルト1と比較して優れた性能を示しましたが、エンジン、トランスミッション、サスペンション、火器管制装置などはMBT-70とKPz.70で異なるものが搭載されており、共同開発の意味が薄れていました。

1969年には、1両あたりのコストが100万ドルを超えるという概算が出たため、西ドイツはプロジェクトから離脱し、独自に次世代戦車の開発を開始しました。アメリカでも、開発期間の長期化と開発費の高騰に対する批判が高まり、1971年11月、ついに開発計画は中止されました。

その後と影響

MBT-70/KPz.70の開発は、結果として両国に多大な費用と時間を浪費させることになりました。しかし、この開発で得られた技術は、後の主力戦車開発に大きな影響を与えました。アメリカでは、MBT-70の設計を見直し、コストダウンを図ったXM803を経て、M1エイブラムスが開発されました。西ドイツでは、レオパルト2の開発が進められました。

特徴

MBT-70/KPz.70には、当時の最新技術が数多く導入されていました。

1,500馬力の高出力ディーゼルエンジン
射撃管制装置と夜間暗視装置
自動装填装置による乗員削減
油圧式可変サスペンション
軽合金の使用

これらの技術は、後の第3世代戦車に引き継がれました。

車体と砲塔

車体高を低く抑えるため、乗員は操縦士を含めて全員砲塔内に収容されました。操縦席は独立したカプセル状で、常に車体の進行方向を向くように設計されていました。また、NBC兵器に対する防護能力も重視され、シュノーケルによる水中走行能力も有していました。

武装

主砲は、当初はアメリカが開発したMGM-51 シレイラ対戦車ミサイルも発射可能な152mmガンランチャーが搭載される予定でしたが、西ドイツ側の主張により、ラインメタル社製の120mm滑腔砲も検討されました。最終的には152mmガンランチャーが搭載されました。副武装として、7.62mm機関銃と20mm機関砲が装備されました。

防御

装甲には、HEAT弾や対戦車ミサイルに対抗できる中空装甲が採用されました。また、HESH弾対策としてスポールライナーが装着されました。乗員の生存性を高めるため、居住ブロックと弾薬庫を分離する設計や、特殊な防火ドアなどが採用されました。

エンジン

エンジンには、コンチネンタル社製の1,500馬力ディーゼルエンジンが搭載されました。このエンジンは、可変圧縮比エンジンという新機構を採用していましたが、トラブルが多発しました。ドイツ仕様のKPz.70では、ダイムラー・ベンツ社製の液冷ディーゼルエンジンが搭載されました。

走行装置

油圧式可変サスペンションにより、車高を1.8mまで下げることが可能でした。これにより、被弾率を下げたり、ハルダウン姿勢をとったりすることができました。また、アクティブサスペンション機構により、走行中の車体の安定性を保ち、走行間射撃を可能にしていました。

計画された派生型

XM742装甲回収車
XM743架橋戦車
XM743戦闘工兵車
* HET-70戦車運搬車

まとめ

MBT-70/KPz.70は、開発こそ中止されたものの、その先進的な技術は後の戦車開発に大きな影響を与えました。米独共同開発という国際協力の難しさを示す一方で、革新的な技術への挑戦が、その後の戦車開発を大きく進歩させたことは間違いありません。

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