キジア台風

キジア台風について

キジア台風（きじあたいふう）は、1950年に日本を襲った台風で、正式には昭和25年台風第29号として知られています。その国際名は「キジア（Kezia）」です。多くの人々に記憶されているこの台風は、特に九州地方や近畿地方に甚大な被害を及ぼしました。

発生と進路

この台風は、マリアナ諸島のサイパン島付近で発生を始めました。1950年9月7日に台風29号に認定され、その後北西へ進行しました。台風は進行するに従い、次第に勢力を増し、9月11日には室戸岬南方500km付近で中心気圧945mb、風速50mという強力な風を伴う台風となりました。その後、進路を西北西に変え、多少勢力を弱めつつも、9月13日正午には鹿児島県の志布志湾付近に上陸しました。

上陸時には中心気圧960mb、風速30m以上と、依然として強い力を持っていました。台風は宮崎県の都城市を通過し、九州地方を横断した後、日本海へと抜け、さらに北海道松前半島付近で再上陸しました。北海道を横断した後、オホーツク海に達し、9月15日にその勢力を失いました。

被害状況

キジア台風の襲来は、前回のジェーン台風からわずか10日後のことでした。この短期間に2度の台風が日本を襲ったため、被害は甚大なものでした。台風が通過した後も、低気圧による豪雨が続き、防災対策が十分に整備されていなかった地域に悪影響を及ぼしました。また、1946年の昭和南海地震による地盤沈下も影響し、高潮による被害はさらに深刻化しました。

九州から近畿にかけての17府県において、家屋や船舶、鉄道などが大きな被害を受けました。具体的には、死者30名、行方不明者19名、負傷者35名が出ました。家屋の全壊や流失、破損は4,836戸に達し、12万1,924棟が浸水しました。田畑では518.1ヘクタールが冠水し、農作物にも深刻な影響を及ぼしました。

特に広島県佐伯郡厳島町の厳島神社では、高潮によって社殿が破損し、山口県岩国市では錦川の増水により錦帯橋が流失する事態が発生しました。このような被害を受けた地域は、1950年9月21日に昭和天皇及び香淳皇后より特別な救済金を拝受しました。

さらに、当時は朝鮮戦争の真っ只中で、仁川上陸作戦が直前に控えていました。公開された高等軍事研究院の資料には、「艦隊が125マイルの暴風に襲われた」と記されています。これにより、戦争の影響と自然災害が同時に起こった混乱した状況がうかがえます。

結論

キジア台風は、その規模と影響から、多くの人々の記憶に残る自然災害として語り継がれています。日本における防災対策の重要性を再認識させる出来事でもあり、忘れてはいけない歴史の一部となっています。

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