キプロス・ポンド

キプロス・ポンド：キプロスの歴史を刻んだ通貨

キプロス・ポンドは、キプロス共和国とイギリスの主権基地領域であるアクロティリおよびデケリアで、2007年12月31日まで使用されていた通貨です。ギリシャ語とトルコ語で「リラ」とも呼ばれていました。キプロスがユーロを採用した2008年以降も、北キプロス・トルコ共和国では現在も使用されています。

歴史：イギリス統治からユーロ導入まで

キプロス・ポンドの歴史は、1879年にイギリスがキプロスでポンドを導入したことに始まります。当初は、1キプロス・ポンド＝180トルコ・ピアストルと設定されました。1972年までは、イギリス・ポンドと等価であり、補助単位としてシリング（1ポンド＝20シリング）とピアストル（1シリング＝9ピアストル）が使われていました。さらに、ピアストルはパラ（1ピアストル＝40パラ）という補助単位で細分化されましたが、パラの額面を持つ硬貨や紙幣は発行されず、郵便切手にのみ記載されていました。

1955年には、1キプロス・ポンド＝1000ミル（ミルは補助単位）とする十進法化が実施され、日常的には5ミルを1ピアストル、50ミルを1シリングと呼ぶようになりました。その後、1983年には、1キプロス・ポンド＝100セント（セントは補助単位）に変更され、最小額面の硬貨は5ミル（後に1/2セントに改称）となりましたが、その後廃止されミル額面の硬貨は法定通貨ではなくなりました。ユーロ移行が進むにつれ、1セントや2セント硬貨の流通が減少、一部の小売店では釣銭として出されなくなるケースも発生しました。

ユーロ移行への道のり

キプロスのユーロ導入は、2005年5月2日の欧州為替相場メカニズム（ERM II）への参加から始まりました。ERM II参加後、ユーロへの交換レートが1ユーロ＝0.585274キプロス・ポンド±15％の範囲に制限されました。その後、2007年2月13日にユーロ導入を正式に申請、同年5月には欧州委員会、6月には欧州議会と欧州理事会がキプロスのユーロ導入を承認しました。2007年7月10日には、ユーロ導入時の為替レートが1ユーロ＝0.585274キプロス・ポンドと決定されました。ユーロ導入に向けて、2006年夏にはキプロスの銀行が預金残高の明細にユーロ表示を併記するなど、準備が進められました。

ユーロ移行とその後

2008年1月1日、キプロスは法定通貨をキプロス・ポンドからユーロに移行しました。交換レートは、1ユーロ＝0.585274キプロス・ポンドでした。キプロス・ポンドの紙幣と硬貨は、2008年1月31日まで法的効力を持ち続け、金融機関では2008年6月30日まで無料でユーロに交換することができました。キプロス中央銀行では、硬貨は2009年12月31日、紙幣は2017年12月31日まで交換を受け付けていました。

硬貨と紙幣

キプロス・ポンドの硬貨と紙幣は、時代とともにその額面やデザインを変えてきました。十進法化以前は、ピアストルやシリングを単位とする硬貨が発行され、その後ミル、セントを単位とする硬貨が導入されました。紙幣も同様に、当初はシリングやポンドを単位としていましたが、ミル、セントを単位とする紙幣も発行されました。様々な額面の硬貨や紙幣が発行され、それぞれに歴史的な背景や特徴があります。

結論

キプロス・ポンドは、キプロスの歴史と経済を反映する重要な通貨でした。ユーロへの移行は、キプロスの欧州統合を象徴する出来事であり、キプロス・ポンドは、その歴史の一区切りを刻みました。現在も北キプロスで使用されているキプロス・ポンドは、キプロス経済の複雑な歴史を物語る存在と言えるでしょう。

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