キャスリーン・アントネッリ

キャスリーン・アントネッリ　人生と業績

キャスリーン・マクナルティ・モークリー・アントネッリ（Kay Antonelli）は、1921年2月12日にアイルランドのドネゴール県で生まれました。彼女はアイルランド系アメリカ人のプログラマとして、世界初の汎用電子デジタルコンピュータ・ENIACの一員に選ばれた女性プログラマの一人として、歴史に名を刻んでいます。

幼少期と教育

彼女の人生は波乱に満ちていました。アイルランド独立戦争の影響で、父親は彼女が生まれた夜に逮捕され、2年間の獄中生活を余儀なくされました。その後、家族はアメリカに移住し、フィラデルフィアのチェスナットヒルに定住しました。この時、アントネッリは英語を話せないアイルランド語の話者でした。彼女はその後、チェスナット・ヒル女子大学で数学を学び、1942年に卒業しました。数学の勉強を重ねる中で、彼女は教育現場に進むのではなく、実践的な分野で活躍したいと考えました。具体的には、保険数理士としての道を模索していました。

計算手としてのキャリア

キャリアの初めは、第二次世界大戦中にアメリカ陸軍が設立した弾道研究所で計算手としての役割を担うことからスタートしました。1942年にアメリカ陸軍に雇用され、弾道の計算を行うために、機械式計算機を使って手作業で演算を行いました。彼女は、職場の同僚フランシス・バイラスと共に雇われ、厳しい環境の中で弾道計算の手法を学びながら、経験を積んでいきました。

また、彼女はアバディーン性能試験場にある微分解析機という高度な計算機を操作し、技術者としてのスキルを磨いていきました。実際、彼女が担当した計算の多くは、非常に精密で緻密なものであり、その正確性に関して多くの注目が集まりました。

ENIACプログラマとしての挑戦

1945年、アントネッリはENIACの最初のプログラマの一人に選ばれました。当時、ENIACは弾道計算の自動化を図るために開発されており、プログラミングのプロセスは非常に困難でした。彼女は他の女性プログラマたちと協力しながら、様々な問題に対処していきます。特に、彼女が提案したサブルーチンというプログラミング手法は、その後の開発において重要な役割を果たしました。

プログラミングの過程では、微分方程式の離散化と回路への振り分けが求められ、非常に高度な数学的知識が必要とされました。アントネッリは、実際の装置に触れることすら許されない中で、設計図を基に作業を進めるという厳しい環境にいました。彼女たちのチームは、全てのコンポーネントの整合性を確認するテストプログラムの実行によって、作業の品質を保証しました。

ENIAC以降の人生

アントネッリは1947年にアバディーンから離れ、のちにENIACの共同開発者ジョン・モークリーと結婚します。彼女は家庭に入り、5人の子供を育てましたが、その後も技術の世界に戻り、モークリーと共に様々なコンピュータプロジェクトに関わっていきました。特に、BINACやUNIVAC Iの設計に携わり、技術者としての影響を拡大しました。

晩年、アントネッリは自身の業績を広く知らしめるために積極的に活動しました。彼女はENIACに関わった出来事に関する記事を執筆し、友人との講演活動や研究者とのインタビューを通じて、女性の技術者としての地位を確立する手助けをしました。2006年に癌で亡くなるまで、彼女の功績は高く評価され続けました。

栄誉

アントネッリの貢献は、後の世代にも影響を与えています。2010年には、戦時中の女性プログラマとしての業績を描いたドキュメンタリーが公開され、2017年にはアイルランドの大学に彼女の名を冠したコンピュータセンターが設立されました。2019年には、新しいスーパーコンピュータの名前が一般投票で決まり、アントネッリの名が選ばれました。

彼女の生涯にわたる努力は、科学技術の進展における女性の役割を再評価するきっかけとなりました。

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