キュプルス属州

キュプルス属州：地中海の戦略的拠点

キュプルス属州は、現在のキプロス島全域を指し、ローマ帝国にとって地中海東部の政治、宗教、交易、そして軍事における重要な戦略拠点でした。この地は、アッシリア、エジプト、マケドニア、ローマといった大国の勢力圏が交錯する場所であり、その歴史は複雑に絡み合っています。紀元前58年にプトレマイオス朝エジプトからローマ帝国に組み込まれ、紀元前22年には正式な元老院属州となりました。

ローマによる統治

紀元前31年のアクティウムの海戦でローマが勝利して以降、4世紀にビザンティンの影響下に入るまで、ローマ人による統治が続きました。属州内は、サラミス、パフォス、アマソス、ラペソスの4つの地域に分けられ、当初はパフォスが属州都として機能していましたが、346年にサラミス（後にコンスタンティアと改名）に遷都されました。

都市一覧

天文学者であり地理学者でもあったプトレマイオスは、キュプルス属州内に以下の都市が存在したと記録しています。

サラミス
パフォス
アマソス
ラペソス

キュプルス属州の歴史年表

以下に、キュプルス属州の歴史を年表形式でまとめました。

〜58BC: プトレマイオス朝エジプトによる統治
58BC: 『キュプルスに関するクロディウス法』により、キュプルスがローマのシキリア属州に編入。小カトが総督として着任。
47BC: キュプルスがプトレマイオス朝エジプトに再度併合。
31BC: アクティウムの海戦でローマが勝利。キュプルスの支配権が再びローマへ。
22BC: キュプルスがシキリア属州から分離し、単独のキュプルス属州となる。属州都はパフォス。
18BC, 17BC, 15BC: 大規模な地震が発生。特に15BCの地震でパフォスが甚大な被害を受ける。
16AD: 大規模な地震が発生。
45AD: パウロとバルナバがキリスト教伝導のためキュプルスを訪問。
49AD: バルナバが再び伝導のため訪問。
65AD - 66AD: クリオンの神殿が再建される。
70AD: エルサレム攻囲戦後、ユダヤ人がキュプルスに大量流入。
116AD: サラミスでユダヤ人の反乱が発生。
269AD: ゴート族がキプロスに侵略。ローマ帝国が撃退。
293AD: 皇帝ディオクレティアヌスによるテトラルキア（帝国四分割統治）により、キュプルスは東方正帝の統治領域となる。
342AD: 大地震によりサラミスとパフォスが破壊される。
346AD: サラミスが再建され、コンスタンティアと改名し属州都となる。
365AD: 地震によりクリオンが破壊される。
395AD: 皇帝テオドシウス1世がローマ帝国を東西に分割。キュプルスを含む東側領域はアルカディウス（初代東ローマ帝国皇帝）に相続される。
688AD: 東ローマ帝国皇帝ユスティニアノス2世とウマイヤ朝カリフアブドゥルマリクがキュプロスの共同統治に合意。以後、約300年にわたり東ローマ帝国（ビザンティン）とアラブの共同主権が行使される。
965AD: 東ローマ帝国の単独主権下に復帰。
* 1191AD: イングランド王リチャード1世が十字軍の途上でこの島を征服。フランク人によるキプロス王国が建国される。

キュプルス属州は、その地理的な重要性から、様々な勢力の影響を受け、複雑な歴史を歩んできました。地震による度重なる破壊と再建も、この地の歴史を特徴づける要素の一つです。ローマ帝国の属州としての時代は、その後のキプロスの歴史に大きな影響を与えました。

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