キリスト教と天皇（制）

書籍『キリスト教と天皇（制）』の概要

『キリスト教と天皇（制）』は、2001年にお茶の水クリスチャン・センターで開催された「日本宣教と天皇（制）」公開討論会を基にした書籍です。この書籍は、編纂者である笹井大庸の考え方を中心に、日本のキリスト教と天皇制の関係について掘り下げています。特に、タイトルにある「天皇制」という表現は共産主義的な意味合いをもっているため、括弧に入れられています。サブタイトルには「キリスト教界を揺るがす爆弾発言!」との言葉が添えられており、本書が単なる学術的議論に留まらないことを示唆しています。

討論会の背景と目的

笹井大庸は、日本のキリスト教界内に「左翼的な反天皇論」が存在することに気付き、これをテーマとして討論の場を設けました。第一部では「クリスチャンの天皇論」として、内村鑑三や中田重治、ウィリアム・グリフィス、グイド・フルベッキといった歴史的な人物の天皇に関する見解が紹介されています。

第ニ部：討論の展開

第二部では、美濃ミッションの代表である牧師石黒イサクと笹井大庸の討論が行われました。この討論には他にも多数の発言者が参加し、東京基督教大学教授の櫻井圀郎やハーベストチャペルの渡辺ミドリ、政教分離の会の事務局長長老西川重則、東宏社長古澤三千雄、ホーリネス教会の牧師上中栄が含まれています。司会はクリスチャン新聞編集長根田祥一とリバイバル新聞編集長谷口和一郎が務めました。笹井は、日本の贖いの賜物として「天皇（制）」を捉えていましたが、石黒イサクや櫻井からは異なる意見が提示されました。

特に、討論の後半には、宣教師木村公一による笹井への反論が収録されており、「天皇制と妥協する道はない」としつつも、笹井の見解が右翼を対象にした伝道において有用であることも認めています。

第三部：宣教における天皇制の意義

第三部では、「宣教の接触点としての天皇（制）」というテーマで笹井と牧師の行澤一人との討論が展開されています。笹井は、日本キリスト教協議会（NCC）や『キリスト新聞』を左翼的と見なしており、行澤は新正統主義の観点から討論を進めるために、カール・バルトやエミール・ブルンナーなどの神のかたちについての議論を引き合いに出しています。これにより、様々な神学的視点からの意見交流が行われ、一層深い考察がなされました。

第四部：討論の反響

最後の第四部では、この公開討論によって引き起こされた反響と、それに対する笹井の見解がまとめられています。キリスト教界に限らず、一般のメディアでもその議論が取り上げられ、特に『朝日新聞』によって「日本宣教と天皇（制）をめぐる激論」と題された記事が掲載されました。

このような背景から、2001年の4月から7月にかけて『クリスチャン新聞』では公開の論争が行われ、議論が白熱し続けました。本書は、日本のキリスト教と天皇制という複雑な関係に対する新たな視点を提供する一冊となっています。

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