キーウ・ジュリャーヌィ国際空港

ジュリャーヌィ国際空港

ジュリャーヌィ国際空港は、ウクライナの首都であるキーウ市内のジュリャーヌィ地区に位置する国際空港です。正式名称は「キエフ国際空港（ジュリャーヌィ）」で、単に「キーウ国際空港」とも呼ばれます。キーウ市内に存在する唯一の空港であり、その敷地面積はおよそ265平方キロメートルです。

空港の成り立ちと変遷

ウクライナにおける航空産業は、ロシア帝国時代から発達が見られました。文化・政治の中心地であるキーウでも、様々な飛行実験が行われており、その際には幅の広いブレスト＝リトウスク街道のような直線道路が仮設滑走路として用いられることもありました。特に知られているのは、複葉機イリヤー・ムーロメツの「キーエフスキイ」号が、キーウとサンクトペテルブルク間を長距離飛行した出来事です。

ロシア内戦を経てキーウが復興を遂げる中、1923年には戦後初の空港が市内に建設されました。翌年には、キーウとハルキウを結ぶ最初の定期航空便が運航を開始しています。しかし、この空港はその後軍事利用に転用されました。第二次世界大戦（大祖国戦争）の際にはキーウは再び戦禍に見舞われますが、空港には1941年から1942年にかけて新しいターミナルビルが建てられました。この建物は、基本的な構造が現在も使われ続けています。

戦後、1945年にジュリャーヌィ軍用飛行場はウクライナ政府に引き渡され、民間空港として供用が始まりました。滑走路は1200メートルに延長され、名称も正式に「キーウ空港」、あるいは「キーウ・ジュリャーヌィ空港」とされました。1950年代を通じてターミナルビルを含む設備は近代化が進み、次第にウクライナの玄関口にふさわしい姿となっていきました。当時のジュリャーヌィ空港では、Li-2、Il-12、Il-14といった中型機が主に運航されていました。また、ソ連空軍の軍用機も運用されており、1950年代末には第86飛行隊の中型双発機などが stationedされていました。当時のキーウ市内には、ジュリャーヌィ空港とスヴャトーシン地区のスヴャトーシノ空港という二つの空港があり、それぞれの特性に応じた使い分けが行われていました。なお、スヴャトーシン地区には著名なアントノフ設計局があります。

1960年代に入ると、キーウの主要な航空玄関口は隣接するボルィースピリ市に新設されたボルィースピリ空港へと移りました。これにより、キーウ市内のジュリャーヌィ空港の発展は限定的なものとなり、主に国内線専用の空港として運用されることになりました。スヴャトーシノ空港は都市化の進展に伴いその役目を終え、現在ではアントノフの機体が時折利用する程度で、一般の地図には記載されていないことも珍しくありません。

ソ連崩壊後、ウクライナが独立すると、市内に位置し利便性の高いジュリャーヌィ空港にも国際便が就航するようになりました。これに伴い、再び「キーウ国際空港」または「ジュリャーヌィ国際空港」と呼ばれるようになったのです。

現在の状況と特徴

現在のジュリャーヌィ国際空港は、周囲を住宅地に囲まれており、これ以上の物理的な拡張が困難な状況にあります。このため、滑走路の長さなどに起因する制約から、運用できる航空機の機種や最大離陸重量に制限があり、特別な許可がなければ大型機の運航は許可されていません。結果として、モスクワ線を含む多くの国際線や主要路線は、キーウ市内からのアクセスが必ずしも良くないボルィースピリ空港に発着せざるを得ない状況が続いています。しかし、2011年3月からは、欧州の主要な格安航空会社であるウィズエアー・ウクライナが、ボルィースピリ空港からジュリャーヌィ国際空港へ拠点を移し、新規路線の運航を開始するなど、新たな動きも見られます。

ジュリャーヌィ国際空港を拠点としている航空会社には、VIP機や航空タクシーを運航する航空事務センター（Центр ділової авіації）、ウクライナ国内および独立国家共同体（CIS）諸国間の路線を持つアエロスタール航空（Аеростар）、チャーター便運航と航空機修理を手がけるARP 410（Авіакомпанія "ARP 410"）、そしてチャーター便運航を行うアエロチャールテル（Аерочартер）などがあります。

また、廃止されたウクライナ防空軍の本部がかつて置かれていたほか、現在もウクライナ空軍の基地が併設されています。ここでは防空軍時代から引き継がれたAn-24、An-26といった中型輸送機や、Mi-8中型輸送ヘリコプターなどが運用されています。

国立航空博物館

近年、ウクライナは航空機に関する博物館の整備に力を入れており、ジュリャーヌィ国際空港の敷地の一角には国立航空博物館が設けられています。この博物館では、軍用機・民間機を問わず、多くの機体が展示されており、現在も収蔵機数を増やしています。特に珍しい展示機体としては、アナトラ・サルムソン複葉偵察機、Yak-28U、Su-17UM、Mi-24A、Tu-134UBL、Tu-22M0などが挙げられます。民間機の中には、原型機やレプリカが含まれている場合もあるようです。

その他

日本の多くの航空券予約ウェブサイトでは、ジュリャーヌィ空港とボルィースピリ空港を一つの検索項目として扱えるよう、シソーラス機能が設定されています。そのため、検索欄に「IEV」（ボルィースピリのIATAコード）と入力しても、国際便の発着が多いボルィースピリ空港の情報が表示されることが一般的です。

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