ギフトパック 南沙織 -1973年版-

アルバム概要

『ギフトパック 南沙織』（ギフトパック みなみさおり）は、1973年11月1日にソニー（発売元は当時のCBSソニー）からリリースされた、日本のアイドル歌手・南沙織のベスト・アルバムです。本作は、彼女がデビューを果たした1971年からこのアルバムの発売に至るまでの期間に発表された楽曲の中から、代表的なナンバーをセレクトして収めた編集盤として位置づけられます。

収録内容と構成

このベストアルバムの最大の特色は、収録された全12曲が、作詞を有馬三恵子、作曲・編曲を筒美京平という、当時の日本のポップスシーンを牽引していたゴールデンコンビの手による作品で占められている点にあります。有馬三恵子の叙情的で瑞々しい言葉と、筒美京平による洗練されつつも親しみやすいメロディライン、そして時代を捉えたアレンジは、南沙織の清純なイメージと透明感のある歌声と見事に融合し、多くのヒット曲を生み出しました。本作はまさに、その蜜月期における南沙織の音楽世界を凝縮した一枚と言えるでしょう。

収録内容は、発売時点までに発表されたシングル盤から、A面曲が8曲、B面曲が2曲選ばれています。ただし、当時のヒット曲の一つであった「カリフォルニアの青い空」は、このベスト盤には収録されていない点が注目されます。シングル曲に加え、1973年9月にリリースされた彼女の5枚目のオリジナルアルバム『早春のハーモニー』からも2曲が追加収録されており、当時の彼女の音楽的な幅広さを示す選曲となっています。合計12曲という構成は、当時のベストアルバムとしては標準的なボリュームと言えます。

全曲が有馬・筒美コンビの作品で構成されていることは前述しましたが、例外的に、B面に収録された「ひとりごと」の編曲のみが矢野誠によって手掛けられています。これもまた、当時の日本の音楽シーンにおいて活躍していたアレンジャーの存在を示す一例です。この、特定の作家陣によってアルバム全体が構成されるというスタイルは、前年に発売された同名のベストアルバム『ギフトパック 南沙織 -1972年版-』とも共通しており、当時のCBSソニーにおける南沙織のプロデュース方針の一端がうかがえます。

収録曲

本作に収録されている楽曲のラインナップは以下の通りです。初期の代表曲から、当時の最新シングルまでが網羅されています。（全作詞: 有馬三恵子、全作・編曲: 筒美京平、特記以外）

サイドA
17才
潮風のメロディ
ともだち
純潔
傷つく世代
色づく街

サイドB
哀愁のページ
昨日の街から
ひとりごと (編曲: 矢野誠)
冬物語 (5thアルバム『早春のハーモニー』より)
魚たちはどこへ (5thアルバム『早春のハーモニー』より)
早春の港

これらの楽曲は、「17才」で鮮烈なデビューを飾って以来、「潮風のメロディ」「純潔」「傷つく世代」「色づく街」といったシングルヒットを連発していた時期の南沙織の代表曲であり、彼女のキャリアの初期における重要なマイルストーンとなる楽曲群です。アルバム収録曲である「冬物語」「魚たちはどこへ」もまた、『早春のハーモニー』というコンセプトアルバムの一部を形成していた楽曲であり、当時の彼女のアーティスト性を示す選曲と言えるでしょう。

現状

なお、このベストアルバム『ギフトパック 南沙織』（1973年版）は、現在のところ単体でCDとして復刻されてはおりません。しかしながら、アルバムに収録されている全12曲に関しては、南沙織の他のベストアルバムやオリジナルアルバムのCD復刻盤などに全て収録されており、現在でも容易に聴くことが可能です。これは、ここに収められた楽曲が、時代を超えて南沙織の代表的なレパートリーとして認知されていることの証左と言えましょう。

まとめ

総じて、『ギフトパック 南沙織』は、デビューからわずか数年でトップアイドルとしての地位を確立した南沙織の初期における活動を、有馬三恵子と筒美京平という強力なタッグが生み出した楽曲群を通じて振り返ることができる貴重なベストアルバムです。当時のファンにとっては、彼女のヒット曲を手軽に楽しむことができる一枚として、また後年のファンにとっては、彼女の初期の音楽世界を知る上で重要な資料となる作品です。その存在は、単なる寄せ集めのベスト盤に留まらず、特定のクリエイターとのコラボレーションが南沙織の音楽性をいかに深く形作っていたかを示す証として、日本の歌謡史における一ページを飾っています。

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