傷つく世代

傷つく世代

「傷つく世代」は、1973年5月1日にCBS・ソニーから発売された南沙織にとって通算7枚目にあたるシングルレコードです。当時の若者が抱える感情や、上の世代との間に生じる感覚の違いをストレートに歌い上げており、曲名自体が時代のムードを象徴する言葉となっています。

楽曲背景と特徴

本作は、それまでのシングル曲「哀愁のページ」や「早春の港」で聞かれたような、情感豊かなミディアムテンポの楽曲から大きく方向転換し、スピード感あふれる激しいロックサウンドを取り入れています。この大胆な変化は、デビュー以来清純派アイドルとして歩んできた南沙織の新たな一面を引き出し、アーティストとしての可能性を示すものでした。楽曲は、同月21日に発売された自身の同名アルバム『傷つく世代』に先行してリリースされ、アルバム全体の方向性を示す役割も担っています。

歌詞を手がけた有馬三恵子氏と、作曲・編曲を担当した筒美京平氏のゴールデンコンビによる本作は、特にそのユニークな歌いだしが印象的です。冒頭部分では「あ」の音で始まる言葉を意図的に重ねる頭韻の技法が用いられており、聴く者に強いインパクトを与えます。また、この楽曲の中で特に「ダメね」というフレーズにおける南沙織の歌唱表現は、文豪・大岡昇平が彼女との対談で言及し、「ベタついていない」彼女の飾らないボーカルの魅力を表す例として挙げられるなど、各方面で注目されました。

周辺情報

「傷つく世代」は、後に結成される人気アイドルグループ、キャンディーズにも大きな影響を与えました。キャンディーズは、1973年12月5日に発売された自身のデビューアルバム『あなたに夢中〜内気なキャンディーズ〜』の中で、この楽曲をカバーしています。興味深いことに、キャンディーズが正式な歌手デビューを果たす以前、1972年の大晦日に開催された第23回NHK紅白歌合戦では、南沙織のステージでバックダンサーを務めたという経緯があり、両者の間に浅からぬ縁があったことがうかがえます。

また、1984年11月21日に発売された南沙織のプロモーションフィルム集『Hello!Cynthia』には、本楽曲のプロモーションフィルムが収録されており、制作当時の1973年頃の貴重な映像資料としてファンにとって見逃せない内容となっています。この映像では、同名のアルバム『傷つく世代』のレコードジャケット写真で着用しているものと同じ衣装をまとった南沙織が、自転車に乗ったり海岸線を走ったりする姿が捉えられています。なお、この印象的な衣装は彼女自身が用意したものであったと伝えられています。

シングルのカップリング曲である「昨日の街から」も、作詞・有馬三恵子、作曲・編曲・筒美京平による楽曲です。こちらの歌詞には、南沙織の記念すべきデビュー曲である「17才」の一節、「海辺を走ってカモメになる」というフレーズを彷彿とさせる描写が登場し、初期の彼女のイメージを重ね合わせることができます。

収録作品

本楽曲「傷つく世代」は、オリジナルアルバム『傷つく世代』をはじめ、その後発売された数多くのベストアルバム、コンピレーション盤などに収録されています。シングルバージョンだけでなく、アルバムバージョン、新規録音による「New Vocal」、さらには当時最先端だったSQ 4chステレオバージョンなど、様々な音源で楽しむことが可能です。また、ライブテイクや他の楽曲とのノンストップミックスバージョンも発表されており、時代を超えて様々な形で再収録・再評価されています。

カップリング曲の「昨日の街から」も同様に、初期のベストアルバムや後年のコンピレーション盤に多数収録されており、ファンにとっては欠かせない楽曲の一つとなっています。

制作クレジット

作詞: 有馬三恵子
作曲・編曲: 筒美京平

関連項目

1973年の音楽
新三人娘

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