ギャンツェ県

ギャンツェ県：チベットの歴史と文化が息づく地

ギャンツェ県は、中華人民共和国チベット自治区シガツェ市に位置する県です。その全称である「傑卡爾孜」は「至高無上の王宮」を意味し、歴史的に重要な地であったことを示しています。ヒマラヤ山脈の麓に広がるこの地域は、チベットの歴史においてラサ、シガツェに次ぐ第三の都市として栄えてきました。

歴史

ギャンツェは、チベットの歴史において重要な拠点であり、その中心には古都の中心であるギャンツェ・ゾン（宗山）がそびえ立ちます。9世紀には吐蕃王朝の後裔が、この地の地形が吉兆であるとして山上に砦を築きました。14世紀にはサキャ王朝の時代に、この地の首領が宮殿と砦を改修し、「傑卡爾孜」と名付けられました。この「傑卡爾孜」が「ギャンツェ」の語源となっています。清朝時代には、この宮殿内に江孜宗の政府が置かれ、山は「宗山」と呼ばれるようになりました。

1904年には、イギリス領インドからイギリス軍が侵攻し、宗山の中腹に砲台などの防御工事が行われました。しかし、圧倒的な戦力差により、ギャンツェを守る軍隊と民衆は、弾薬も食糧も尽き、崖から身を投じて亡くなりました。この事件は、後に「江孜虐殺事件」として、中国共産党によって宣伝されるようになりました。1960年に江孜県が設立され、現在はシガツェ市に属しています。

行政区画

ギャンツェ県は、1つの鎮と18の郷を管轄しています。

鎮: ギャンツェ鎮（江孜鎮）
郷: 納如郷、卡麦郷、卡堆郷、蔵改郷、日朗郷、タクツェ郷（達孜郷）、熱索郷、重孜郷、龍馬郷、加克西郷、紫金郷、江熱郷、年堆郷、康卓郷、金嘎郷、日星郷、車仁郷、熱龍郷

名勝・旧跡

ギャンツェ県には、宗山の他にも、パンコル・チューデ（白居寺）、パラ荘園などの名所旧跡が数多く存在します。特にパンコル・チューデは、1418年に建立された大規模な寺院であり、チベット仏教のサキャ派、シャル派、ゲルク派の三つの宗派が共存している珍しい場所です。

地理・産業

ギャンツェ県は、チベット中南部のヒマラヤ山脈とカンディセ山脈との間の山谷に位置しています。ヤルンツァンポ川の支流であるニャンチュ川が県境を流れており、温暖な気候と豊富な日照に恵まれています。農業が主要な産業であり、ハダカムギ、エンドウマメ、コムギ、アブラナなどが栽培されています。チベットの主要な食糧生産基地の一つであり、「後蔵の糧倉」とも呼ばれています。また、当地で作られる絨毯は、1200年の歴史を持ち、高い評価を得ています。

文化と観光

ギャンツェ県は、「国家歴史文化名城」に指定されており、その歴史的な価値が認められています。
国家歴史文化名城: 江孜
全国重点文物保護単位: 江孜宗山抗英遺址、白居寺

ギャンツェ県は、その歴史、文化、そして美しい自然景観を通じて、訪れる人々に深い印象を与える魅力的な場所です。

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