ギリシャ第一共和政

ギリシャ第一共和政からギリシャ王国成立まで

ギリシャ第一共和政は、オスマン帝国からの独立を目指したギリシャ独立戦争中に生まれた、暫定的な国家体制です。この名称は、後の第二共和政、第三共和政との連続性を示すために歴史学上で用いられるもので、公式なものではありません。

独立戦争の勃発

1821年3月6日、アレクサンドル・イプシランチ率いるフィリキ・エテリアの部隊がオスマン帝国領に侵入し、ギリシャ独立戦争が始まりました。しかし、列強諸国は当初この動きを非難し、イプシランチの部隊は壊滅します。それでも、ギリシャ各地で民衆蜂起が続き、ペロポネソス半島を中心に反乱軍が勢力を拡大しました。ヨーロッパ各地ではギリシャの蜂起を支持する動きがあり、義勇兵として参加する者も現れました。

独立戦争初期の混乱

反乱軍は当初有利に戦いを進めましたが、内部では勢力が乱立し、足並みが揃いませんでした。ペロポネソス、中央ギリシャ西部、中央ギリシャ東部でそれぞれ臨時政府が樹立され、さらに多くの党派が各地で割拠しました。1821年12月、これらの問題を解決するために、エピダウロスで第1回国民議会が開催され、三政府の統合が合意されました。翌年1月にはギリシャ初の憲法が公布されましたが、その後も内戦が勃発するなど、混乱は続きました。

列強の介入とギリシャの苦境

独立戦争後半、オスマン帝国はエジプトのメフメト・アリの息子、イブラヒム・パシャを派遣し、ギリシャ軍は苦境に立たされます。しかし、この状況をみたイギリス、フランス、ロシアは、ギリシャ独立戦争への介入を決定します。1826年4月、イギリスとロシアは『ペテルブルク議定書』を調印し、オスマン帝国を宗主国とするギリシャ自治国の構築を合意。さらに1827年には、『ロンドン条約』により、三国は正式に介入を開始しました。これにより、ギリシャ国内では三国それぞれの支持勢力が形成され、政治的混乱を招きました。

大統領選出とナヴァリノの海戦

1827年5月、ギリシャ臨時政府はイオアニス・カポディストリアスを大統領に選出します。カポディストリアスは、ギリシャの独立を支援するためヨーロッパ各地を奔走しました。しかし、ギリシャに到着後、彼は憲法を停止し、臨時政府を解散するなど、強権的な政治を行いました。一方、オスマン帝国は自治国化を拒否したため、1827年10月20日、ナヴァリノの海戦が勃発し、列強三国艦隊がオスマン艦隊に勝利。この戦いの結果、ギリシャ独立戦争の趨勢は決しました。

ギリシャ王国の成立

ナヴァリノの海戦後も、露土戦争などの影響で、ギリシャの国境設定は遅れましたが、1829年にはアドリアノープル条約でギリシャの自治国化が決定。1830年、『ロンドン議定書』により、ギリシャは列強の保護下で独立を果たし、王国となることが決定しました。しかし、カポディストリアスの政治に不満を持つ人々も多く、1831年には彼が暗殺されるという事件も発生しました。その後、カポディストリアスの死後の混乱を経て、列強三国とバイエルン政府は1832年5月7日に条約を締結し、ウィッテルスバッハ家のオットー（オソン1世）がギリシャ王に選出され、1833年2月にオソン1世が仮首都ナフプリオンに到着し、ギリシャ王国が成立しました。

参考文献

リチャード・クロッグ著・高久暁訳『ギリシャの歴史』創土社、2004年。
周藤芳幸・村田奈々子共著『ギリシアを知る辞典』東京堂出版、2000年。
* 桜井万里子著『ギリシア史』山川出版社、2005年。

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