クィントゥス・ペディウス

クィントゥス・ペディウス：カエサルの血縁にして共和政ローマの悲劇の政治家

クィントゥス・ペディウス（生年不詳 - 紀元前43年）は、共和政ローマ末期の激動の時代を生きた政治家であり軍人です。平民出身でありながら、ガイウス・ユリウス・カエサルの親戚という関係から、政界で重要な役割を担いました。

生い立ちとカエサルとの関係

ペディウスの家系は平民でしたが、カエサルの姉ユリアが身分違いの結婚をしたことで、カエサルとの親戚関係が生まれました。スエトニウスはペディウスをユリアの孫としていますが、年代的に疑問が残ります。おそらく、ユリアの息子でカエサルの甥にあたる可能性が高いと考えられています。

軍人としての活躍

ペディウスは、カエサルの下でガリア戦争に従軍し、副官（レガトゥス）として活躍しました。紀元前57年には、ガリア・キサルピナで2個軍団を徴募し、ベルガエでの戦いでは騎兵部隊を指揮するなど、軍事的な才能を発揮しました。

政界での挫折と再起

紀元前55年には按察官（アエディリス）に立候補しましたが、カエサルの支援があったにもかかわらず落選しました。しかし、カエサルとポンペイウスの内戦が始まると、ペディウスはカエサルのために各地を転戦し、ポンペイウス派の鎮圧に貢献しました。内戦終結後、ヒスパニア・ウルテリオルの総督として赴任し、ポンペイウス派の残党を討伐するなどの功績を挙げ、凱旋式を行っています。

カエサルの死とペディウス法

カエサルの暗殺後、ペディウスはカエサルの遺産を相続し、オクタウィアヌスを支援するようになりました。紀元前43年には補充執政官（コンスル・スフェクトゥス）に就任し、カエサルの暗殺者を処罰するための「ペディウス法」を制定しました。この法律は、カエサルの暗殺に関与した人物を法的に裁くためのものでしたが、その後の政局に大きな影響を与えることになります。

三頭政治の始まりとペディウスの死

ペディウス法制定後、アントニウス、レピドゥス、オクタウィアヌスの間で第二回三頭政治が始まりました。しかし、三頭政治は反対派に対する粛清を開始し、多くの人々が殺害される事態となりました。ペディウスは、新たな粛清の犠牲者が増えることを恐れ、プロスクリプティオ（国家の敵）リストを限定的に公開しましたが、実際にはリストに記載された多くの人々が殺害されました。

アッピアノスによれば、ペディウスは粛清による虐殺を恐れる市民を鎮めるために奔走し、その結果過労死したと伝えられています。三頭政治の真の意図を知らず、市民の安全を願ったペディウスの死は、共和政ローマの終焉を象徴する出来事となりました。

家族

ペディウスは、ウァレリウス・メッサッラ家の女性と結婚しており、息子も財務官を務めた記録が残っています。

クィントゥス・ペディウスは、カエサルの親戚という立場から政界で活躍しましたが、その生涯は激動の時代に翻弄された悲劇的なものでした。彼の死は、共和政ローマの終焉を告げる出来事として、歴史に刻まれています。

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