クィーンストン・ハイツの戦い

クィーンストン・ハイツの戦いは、1812年 10月13日に、現在のオンタリオ州クィーンストン近郊で、アメリカ軍とイギリス軍の間で行われた戦闘です。この戦いは、米英戦争の初期における重要な戦いの一つであり、特にイギリス軍にとっては、カリスマ的な指導者であったアイザック・ブロック将軍を失ったことで知られています。

戦闘の背景

アメリカ軍は、アッパー・[[カナダ]]（現在オンタリオ州の一部）を3方向から攻撃する作戦を立てていました。その一つが、ナイアガラ川を渡ってクィーンストンを占領する作戦でした。他の二つは、デトロイトからアマーストバーグを攻撃する作戦と、セントローレンス川を渡ってキングストンを奪取する作戦でした。アメリカ軍は、これらの3方面からの攻撃でカナダを掌握し、早期の停戦に持ち込むことを目指していました。

しかし、作戦は当初から計画通りには進みませんでした。デトロイト方面では、ウィリアム・ハル将軍がイギリス軍と同盟を結んだインディアンの攻撃を恐れて降伏しました。また、セントローレンス川方面では、ヘンリー・ディアボーン将軍がなかなか侵攻を開始しませんでした。これらの状況下で、ヴァン・レンセリア少将は、焦る世論と自身の野心から、ナイアガラ川を渡る作戦を強行することになります。

アメリカ軍の内部不和

ヴァン・レンセリアは、ニューヨーク州民兵の少将でしたが、実戦経験がありませんでした。彼は、ニューヨーク州知事選挙の有力候補であり、現職知事から選挙戦から遠ざけるために軍の指揮官に任命されたという背景もありました。ヴァン・レンセリアは、実戦経験豊富な従兄弟のソロモン・ヴァン・レンセリア大佐を副官として迎え、作戦の助言を求めました。しかし、アメリカ軍の内部は一枚岩ではありませんでした。アレクサンダー・スミス准将は、ヴァン・レンセリアの命令を無視し、自身の部隊を前線に合流させようとしませんでした。スミスは、ルイストンではなくバッファロー近くに部隊を配置し、ヴァン・レンセリアの作戦を混乱させました。ヴァン・レンセリアは、スミス抜きでクィーンストンを攻撃することを決断します。

イギリス軍の準備

一方、イギリス軍は、アッパー・[[カナダ]]副知事であり軍司令官でもあるアイザック・ブロック将軍が指揮を執っていました。ブロックは、積極的な指揮官であり、デトロイト砦の奪取成功で名声を上げていました。しかし、ブロックの上官であるジョージ・プレボストは、慎重な姿勢を求めていました。プレボストは、米英間の休戦交渉がうまくいくことを期待し、攻撃的な作戦を避けるようブロックに指示していました。ブロックは、アメリカ軍の動きを警戒しつつ、防衛的な態勢を敷いていました。また、イギリス軍は、アメリカ軍が川を渡って攻撃してくる可能性を考慮し、各地に部隊を配置していました。

戦闘の開始

10月13日、アメリカ軍はナイアガラ川の渡河を開始しました。ヴァン・レンセリア大佐率いる部隊が最初に上陸を試みましたが、イギリス軍の激しい砲撃を受けました。ヴァン・レンセリア大佐は、上陸直後に銃撃を受け、負傷しました。その後、ジョン・E・ウール大尉が指揮を引き継ぎ、クィーンストンの足場を確保するために戦いました。イギリス軍の大砲は、アメリカ軍の船を攻撃し、大きな損害を与えました。アメリカ軍は、第2波の攻撃を試みましたが、これもイギリス軍の砲撃で阻止され、上陸に失敗した兵士たちは降伏を余儀なくされました。

アイザック・ブロック将軍の戦死

ジョージ砦で砲撃音を聞いたブロック将軍は、少数の副官とともにクィーンストンへ向かいました。彼は、クィーンストン・ハイツの防御が薄いことに気づき、高地を奪還しようと攻撃を開始しました。しかし、アメリカ軍の激しい反撃を受け、撤退を余儀なくされました。ブロック将軍は、2回目の攻撃を指揮中に、アメリカ軍の狙撃兵に撃たれ、戦死しました。この戦死は、イギリス軍にとって大きな痛手となりました。

シェフの攻撃とアメリカ軍の敗北

ブロック将軍の死後、イギリス軍の指揮はロジャー・シェフ少将が引き継ぎました。シェフは、援軍を集め、アメリカ軍を包囲する作戦を立てました。アメリカ軍は、クィーンストン・ハイツを占領していましたが、増援部隊の到着が遅れ、補給も不足していました。また、モホーク族のインディアンがアメリカ軍に攻撃をしかけ、アメリカ軍の士気を大きく低下させました。アメリカ軍の民兵は、インディアンの攻撃を恐れて逃げ出し、戦意を失いました。午後4時、シェフは全軍を率いて攻撃を開始し、アメリカ軍は敗北し、降伏を余儀なくされました。

戦闘の後

クィーンストン・ハイツの戦いは、アメリカ軍にとって惨憺たる敗北となりました。アメリカ軍は、多数の戦死者、負傷者、捕虜を出し、作戦の失敗の責任をめぐって、内部で非難の応酬が起こりました。一方、イギリス軍は、アイザック・ブロック将軍を失ったものの、この勝利で士気を高めました。この戦いは、米英戦争におけるその後の戦いの流れを大きく変える出来事となりました。

戦いの影響

クィーンストン・ハイツの戦いは、アメリカ軍の作戦の拙劣さと、内部の不和を露呈しました。また、この戦いで英雄的な死を遂げたアイザック・ブロック将軍は、イギリス軍の象徴となりました。この戦いの敗北は、アメリカ軍に大きな衝撃を与え、その後の作戦に大きな影響を与えました。また、この戦いは、米英戦争が長期化する一因にもなりました。この戦いで、アメリカ軍はイギリス軍の強さと作戦力を目の当たりにし、その後の作戦においてより慎重な姿勢を取るようになりました。

参考文献

Berton, Pierre (1980). The Invasion of Canada, 1812-1813. Toronto: McClelland & Stewart.
Hitsman, J. Mackay (Donald E. Graves ed.) (1999). The Incredible War of 1812. Toronto: Robin Brass Studio.
Malcomson, Robert (2003). A Very Brilliant Affair: The Battle of Queenston Heights, 1812. Toronto: Robin Brass Studio.
Van Rensselaer, Solomon (1836). A Narrative of the Affair of Queenstown in the War of 1812. New York: Leavitt, Lord & Co.
* Zaslow, Morris (ed) (1964). The Defended Border. Toronto: Macmillan of Canada.

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