クウェーン

クウェーン (แขวง) とは

クウェーン（タイ語: แขวง）は、タイ王国の首都であるバンコク都に設けられている行政単位の一つです。これは、バンコク都独自の行政階層において、区に相当するケート（เขต）の下位に位置づけられています。

現在のタイにおける位置づけ

タイの地方における一般的な行政システムでは、県（チャンワット、จังหวัด）の下に郡（アムプー、อำเภอ）が置かれ、さらにその下にタムボン（ตำบล）と呼ばれる単位が存在します。バンコク都のクウェーンは、この地方におけるタムボンと機能や住民生活への関わりにおいて類似点が多いことから、それに相当するものとして捉えられることが一般的です。ただし、バンコク都は特別行政区であり、その行政構造は地方の県とは異なるため、厳密には比較対象としての位置づけとなります。

歴史的背景

クウェーンという名称の行政単位は、歴史的にバンコク都以外にも存在した時期があります。特に、チャクリー改革と呼ばれるタイ近代化の過程で、地方行政の再編が進められた際に、一部の地方の県（当時はムアン、เมืองなどとも呼ばれた）において、アムプーに代わる下位区分としてクウェーンが設置された事例があります。例えば、タイ北部のかつてのラーンナー地域などでは、このような行政単位が見られました。これらの地方のクウェーンは、現在のアムプーに近い位置づけであったと考えられています。しかしながら、その後の行政組織の整備に伴い、現在ではタイの地方においてクウェーンという名称のアムプー相当、あるいはそれ以下の行政単位は存在していません。現在のクウェーンは、バンコク都独自の行政区分として残る形となっています。

ラオスのクウェーンとの関係

隣国ラオスにもクウェーン（ラオ語: ແຂວງ）という名称の行政区分が存在します。ラオスのクウェーンは、タイのクウェーンと同語源であると考えられていますが、その行政階層における位置づけは全く異なります。ラオスでは、クウェーンは国の下位の行政区分であり、しばしば日本語では「県」と訳されます。これはタイの行政単位でいうと、最も大きな区分であるチャンワット（県）に近い位置づけであり、バンコク都の末端単位であるクウェーンとは規模も機能も大きく異なります。同じ名称でありながら、国によって意味するところが全く異なる行政単位の一例と言えるでしょう。

まとめ

以上のことから、クウェーンは現在、タイ王国においてはバンコク都に特有の行政単位であり、区（ケート）の下に置かれる基礎的な区分です。タイ地方のタムボンと類比されることはありますが、歴史的な変遷を経て、今日のタイではバンコク都のみに存在する名称となっています。また、ラオスの同名の行政単位とは語源を共有するものの、行政構造上の位置づけは大きく異なります。

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