タマカイ

タマカイ（Epinephelus lanceolatus）

タマカイは、スズキ目ハタ科に分類される大型の魚です。ハタ科の中では最大級で、インド太平洋に広く分布しています。

分類

タマカイは、1790年にドイツの博物学者マルクス・エリエゼル・ブロッホによって、Holocentrus lanceolatusとして初めて記載されました。その後、分類の見直しを経て、現在はEpinephelus属に分類されています。タマカイは、同じくハタ科に属するイタヤラと近縁であると考えられています。

分布

タマカイは、紅海から東アフリカにかけて、南は南アフリカ、東はインド洋から西太平洋、北は南日本、南はオーストラリアまでと、非常に広い範囲に分布しています。オーストラリアでは、西オーストラリア州から東海岸にかけて見られます。また、クリスマス島やココス諸島、タスマン海の海域にも分布しています。日本では、伊豆諸島、小笠原諸島、和歌山県、鹿児島県、沖縄島以南の琉球列島で確認されています。

形態

タマカイは、標準的な体長が体高の2.4〜3.4倍です。頭部は背側輪郭と眼窩が凸状で、鰓蓋の角は丸く、縁が細かい鋸歯状になっています。背鰭は11棘と14-16軟条から、臀鰭は3棘と8軟条から成ります。口は大きく、尾鰭はわずかに丸みを帯びています。側線鱗は54〜62枚です。成魚の体色は灰褐色から暗褐色で、大きさの異なる白色の斑点が散らばっています。幼魚は黄色く、鰭に暗色の横縞と斑点があります。タマカイは、全長180cmほどが一般的ですが、最大で全長270cm、体重400kgに達する個体も存在します。サンゴ礁に生息する硬骨魚類としては最大級です。

生態

タマカイは、水深1〜100mの浅瀬に生息しています。サンゴ礁に生息し、大型個体は岸や港でも捕獲されます。幼魚はサンゴ礁に隠れて生活していますが、成魚は単独で行動し、サンゴ礁の外側やラグーンに縄張りを持つことが多いです。タマカイは、日和見的な待ち伏せ型の捕食者で、様々な魚類、小型のサメ、ウミガメの幼体、甲殻類、軟体動物などを捕食します。特に、サンゴ礁や岩場ではイセエビ科を好んで捕食します。寿命は長く、好奇心が強く、ダイバーに近づくことがありますが、一般的に人間にとって危険とは考えられていません。

繁殖

タマカイは、ほとんどのハタ類と同様に、雌性先熟の雌雄同体です。産卵は月の満ち欠けに合わせて行われ、集団で産卵します。産卵は、通常、雄1匹に対して雌が数匹で行われます。一部の個体は、雌として性成熟してから雄に性転換しますが、雌として性成熟することなく精子を作り始める場合もあります。

人間との関係

タマカイは、食用として非常に価値が高く、商業漁業やスポーツフィッシングの対象となっています。香港では小型の個体が重宝され、皮、胆嚢、胃が漢方薬として利用されます。日本では、沖縄県で高級料理として用いられています。養殖も行われていますが、稚魚の供給が限られています。台湾では稚魚の生産に成功しており、東南アジアに輸出されています。タマカイは、台湾では「ハタの王」、「魚のボス」と呼ばれています。日本にも輸入されることがありますが、その量は少ないです。沖縄県では、タマカイの種苗生産技術の研究が進められています。近畿大学では、タマカイとクエの雑種である「クエタマ」が開発され、養殖が行われています。タマカイは、現代の魚類の中では最もシーラカンスに似た形態や習性を持つとされており、水族館で展示されることもあります。また、タマカイが腫瘍を患い、化学療法で回復した事例も報告されています。

タマカイは、一部の地域では「ダイバーを丸呑みにしてしまう」と恐れられていますが、人を襲ったという記録はありません。しかし、大型個体には注意が必要です。タマカイは、分布が非常に広いものの、漁獲圧の高い地域では絶滅しており、分布域全体でもまれな種とされています。生息数の推移に関するデータが不足しているため、現在の生息状況は不明とされています。食用や薬用としての乱獲、飼育施設での展示目的での採集などにより、絶滅が危惧されています。日本では、沖縄県レッドリストで絶滅危惧IA類に指定されています。

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