クラテロス

クラテロスの生涯と業績

クラテロス（希: Κρατερός、紀元前370年頃 - 紀元前321年）は、マケドニア王国の著名な将軍であり、アレクサンドロス3世（大王）の下で数々の戦闘に参加しました。彼はアレクサンドロスの子であり、兄弟にはアンポテロスがいます。

アレクサンドロスの下での活躍

クラテロスはアレクサンドロスの東征に深く関与し、特に重装歩兵部隊の指揮官として名を馳せました。彼は数多くの主要な戦闘に参加し、その中にはグラニコス川の戦いやイッソスの戦い、ガウガメラの戦いが含まれます。特に紀元前332年のテュロスの包囲戦では、プニュタゴラスと共に艦隊を指揮しました。また、彼はヒュルカニアでタプリア人と戦ったり、ソグディアナでカタネスとアウスタネスという豪族に対して別働隊を率いたりするなど、アレクサンドロスからの信任を受け、多くの戦場で活躍しました。

紀元前326年のヒュダスペス川の戦闘では、対岸で別の部隊を率いることが求められ、帰路には内陸を経由してカルマニアまで進軍しました。彼の戦略的な移動は、アレクサンドロスの軍と合流するためにも重要な役割を果たしました。

紀元前324年にはスサで行われた集団結婚式で、彼はペルシア王ダレイオス3世の弟の娘アマストリネと結婚しました。その後、彼は退役兵をマケドニアに帰す任務を託されましたが、その任務を遂行中にアレクサンドロスがバビロンで死去しました。

アレクサンドロスの死後

紀元前323年にアレクサンドロスが死んだ後、クラテロスはバビロン会議に参加し、レオンナトスやペルディッカス、アンティパトロスと共に、まだ生まれぬアレクサンドロス4世の後見人となりました。この会議では、マケドニアの統治と防衛を任されました。

翌年の紀元前322年には、ギリシアの都市が反乱を起こし、ラミア戦争が勃発しました。この時、クラテロスはアンティパトロスと協力し、ギリシア連合軍をクランノンの戦いで打ち破り、マケドニアの勝利に貢献しました。この戦闘の後、アンティパトロスは彼に名誉と贈り物を授け、娘のフィラを嫁がせました。

紀元前321年、クラテロスはペルディッカスに対抗するために同盟を組織しました。ペルディッカスがエジプトのプトレマイオスによる遠征を開始すると、クラテロスはアンティパトロスと共に小アジアで防衛にあたるエウメネスに対抗しました。戦闘が続く中、クラテロスとネオプトレモスの軍はヘレスポントス近郊でエウメネスと激突しました。

エウメネスはクラテロスの名声を利用し、彼への裏切りを恐れる手法を駆使しましたが、クラテロスは戦闘中に落馬し、誤って軍に踏みつけられて死亡しました。彼の死後、エウメネスは友情の証として彼に壮大な葬儀を行い、彼の遺骨はマケドニアの妻や子供のもとに戻されました。

人物像

クラテロスはアレクサンドロスの親友であり、信頼できる家臣として知られていました。彼は「王の友」と呼ばれ、その一方で、ペルシア風の風俗を取り入れたアレクサンドロスに対抗して、マケドニアの伝統を守ることを主張しました。このため、彼はマケドニアの将兵から高い評価を受けていました。一方で、彼を戦死させたエウメネスは、彼との友情から逆に敵意を向けられることとなりました。クラテロスの生涯は、戦士としての卓越性と、誇り高いマケドニア人のアイデンティティを象徴しています。

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