クランベリー

クランベリー：酸味と健康効果が魅力の赤い実

クランベリーは、ツツジ科スノキ属に分類される常緑性の低木です。北半球の寒帯地域、特に酸性の沼地などに自生しており、蔓状の枝を地面に這わせるように伸ばして生育します。高さは10cm程度と小型で、小さな常緑の葉と、ダークピンク色の反り返った花弁を持つ花をつけます。

特徴的な赤い実とユニークな収穫方法

クランベリーの最大の特徴は、1～2cmほどの球形をした赤い実です。生食も可能ですが、強い酸味を持つため、ジャムやジュース、ソース、ドライフルーツなどに加工されて広く利用されています。特に、アメリカ合衆国とカナダの感謝祭では、七面鳥の丸焼きに添える甘酸っぱいクランベリーソースが欠かせません。

収穫方法は非常にユニークです。成熟したクランベリー畑には、果実を傷つけることなく収穫できるよう、果実が完全に沈むほどに水が張られます。その後、水中で木を揺することで実を水面に浮かび上がらせ、大型機械で効率的に収穫します。この方法は、冷害からの保護にも役立っています。

クランベリーの種類

主なクランベリーの種類は以下の4種です。

ツルコケモモ（Vaccinium oxycoccos）：北ヨーロッパ、北アジア、北アメリカ北部などに広く分布する代表的な種類。葉は小さく、花は細長い茎の先端に付きます。果実は小ぶりで薄いピンク色です。
ヒメツルコケモモ（Vaccinium microcarpum）：北ヨーロッパと北アジアに分布。ツルコケモモに比べて葉が三角形で、花茎には毛がありません。
オオミツルコケモモ（Vaccinium macrocarpon）：北アメリカ北東部に分布。葉はツルコケモモよりも大きく、果実も大きいです。アメリカン・クランベリーとも呼ばれ、商業栽培が盛んです。
アクシバ（Vaccinium erythrocarpum）：北米アパラチア山脈南部と東アジアに自生する種類です。

なお、コケモモは英語でマウンテンクランベリーと呼ばれることもありますが、リンゴンベリーという名前の方が一般的です。

クランベリーの名前の由来と歴史

クランベリーの名前は、花が咲く時期の茎や花弁が鶴（crane）の形状に似ていることに由来すると言われています。他に、クランベリーが鶴の好物であるという説や、アメリカ初期の移民がその形状を鶴に例えたという説など、諸説あります。カナダ北東部では「モスベリー」、英語圏では「フェンベリー」とも呼ばれています。

北アメリカでは、古くから先住民が食用や薬用、染料として利用していました。1816年頃にはアメリカで商業栽培が始まり、その後ヨーロッパにも輸出されるようになりました。

クランベリーの栽培

クランベリーの主要な生産地は、アメリカ合衆国（マサチューセッツ州、ウィスコンシン州など）とカナダです。商業栽培では、湿地帯や浅い地下水のある高地を利用し、土壌の排水や灌漑設備を整えた畑で栽培されます。一年中水浸しという誤解がありますが、生育期には土壌は湿潤に保たれていますが、水に浸かっているわけではありません。収穫期には、収穫と越冬のための水管理が行われます。

クランベリーは挿し木によって繁殖します。新しい畑にツルを植え付け、適切な水やりと肥料管理を行うことで、根付いたツルから新芽が成長します。1ヘクターあたりの設置費用は高額です。

クランベリーの収穫と保存

収穫期は秋（9～11月上旬）で、実が赤く熟した頃に行われます。大部分は水を使った方法で収穫されますが、少量は手摘みで行われ、生で販売されます。

収穫されたクランベリーは、洗浄・選別後、加工用または生食用として保管されます。生食用は通気性の良い容器に入れ、低温の倉庫で保存されます。加工用は冷凍保存されることが多いです。

クランベリーの栄養価と食用方法

クランベリーは、ビタミンC、食物繊維、マンガンなどの栄養素が豊富です。しかし、非常に酸味が強いため、生食されることは少なく、ほとんどがジュース、ソース、ジャムなどに加工されます。クランベリージュースは、甘味料を加えたり、他の果汁を混ぜたりして飲まれます。また、クランベリーソースは、七面鳥料理などによく合います。パンやケーキなどの焼き菓子にも利用されます。

クランベリーの健康効果と注意点

クランベリーには、尿路感染症予防効果があるとされています。また、アントシアニンによる抗酸化作用や、血糖値や血圧のコントロールに役立つ可能性も示唆されています。しかし、効果には個人差があり、過剰摂取によるシュウ酸結石のリスクや、下痢・嘔吐などの副作用も報告されています。尿路感染症への効果については、研究結果にばらつきがあるため、断定的なことは言えません。高齢者や妊婦、特定の疾患を持つ患者への効果については、さらなる研究が必要です。

参考文献

伊藤進吾、シャンカール・野口監修 誠文堂新光社編『世界で使われる256種 ハーブ&スパイス辞典』誠文堂新光社、2013年12月23日
辻井達一『続・日本の樹木』中央公論新社〈中公新書〉、2006年2月25日

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