クラーレ

クラーレ (Curare) の詳細

クラーレは、南アメリカの原住民によって狩猟の際に使われている毒の総称です。特に矢に塗布され、地方によって異なる成分が使用されています。日本においては、毒物及び劇物取締法により毒物に指定されています。

歴史的経緯

16世紀の大航海時代にヨーロッパ人が南米に進出し、原住民との接触が始まると、狩猟や戦闘において用いられる矢毒の成分に注目が集まりました。この毒物は、地域によって「クラリ」や「ウラリ」と呼ばれ、1595年には探検家ウォルター・ローリーがオリノコ川地方を探検した際に、それを『ギアナ帝国の発見』で紹介し、「クラーレ」という名称が広まりました。この名称は「鳥を殺す」を意味しています。

当初、クラーレの詳細な使用法や成分は原住民の秘密とされ、ヨーロッパでは幻想的な魔術として描かれ、多くの誤解も生まれました。しかし、18世紀半ばにフランスの科学者シャルル＝マリー・ド・ラ・コンダミーヌの探査により、クラーレの性質に関する知見が欧州に広まりました。特に、アレクサンダー・フォン・フンボルトによる1800年の調査で、クラーレが特定のつる植物から作られ、矢や武器に塗布されること、中毒者は麻痺に至って死亡することが確認されました。

クラーレの作用

19世紀に入ると、イギリスの冒険家チャールズ・ウォータートンやフランスの生理学者クロード・ベルナールの研究により、クラーレは呼吸を麻痺させる作用があることが解明されました。つまり、クラーレの影響により人や動物の神経伝達が遮断され、筋肉が機能しなくなるのです。クラーレの主成分には、ツボクラリンやC-トキシフェリンなどがありますが、これらはアセチルコリンのアンタゴニストとして機能します。

分類と使用

クラーレは各部族によって異なる名称や原料が使用されますが、大まかに以下の3つに分類されます。

• - ツボクラーレ (Tubo curare): アマゾン川流域で使われ、竹筒に収納されます。
• - ポットクラーレ (Pot curare): 仏領ギニア及びアマゾン川流域で使われ、小型の壺に収納されます。
• - カラバッシュクラーレ (Calabash curare): ネグロ川やオリノコ地方の一部で用いられ、ヒョウタンに保存されます。

医学への応用

20世紀に入ると、クラーレの成分が分離され、医療における応用が模索されるようになりました。手術の際の筋弛緩剤としての使用が検討され、人工呼吸器が発展したことで深刻な呼吸麻痺の問題も克服されました。特に、スキサメトニウムなどの筋弛緩薬が開発され、現在でも広く使用されています。

文学におけるクラーレ

クラーレは文学作品にも見られ、特にシャーロック・ホームズシリーズの一編『サセックスの吸血鬼』にはクラーレに関連する描写が存在します。

クラーレは、その独特な性質や歴史だけでなく、現代医学にも大きな影響を与え続けています。その材料や作用に関する知識は、今後も研究や医療の発展に貢献するでしょう。

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