クリスティアン・カンナビヒ

ヨハン・クリスティアン・カンナビヒ

ヨハン・クリスティアン・イノセンツ・ボナヴェントゥーラ・カンナビヒ（Johann Christian Innocenz Bonaventura Cannabich, 1731年12月28日（洗礼） - 1798年1月20日）は、18世紀後半に活躍したドイツのヴァイオリニスト、作曲家、そして楽団の指導者（カペルマイスター）です。マンハイム楽派の重要な担い手として、ヨハン・シュターミッツが築いた基盤を受け継ぎ、その管弦楽団を「ヨーロッパで最も洗練され、規律が行き届いた」集団へと発展させる上で中心的な役割を果たしました。約200曲に及ぶ彼の作品、特に交響曲は、マンハイム楽派の特徴である精緻な強弱の変化、とりわけ緩やかなクレッシェンドやディミヌエンドを際立たせ、後のウィーン古典派における管弦楽の書法に大きな影響を与えました。

生涯

家庭環境と初期

カンナビヒはマンハイムに生まれました。父マルティン・フリードリヒ・カンナビヒはマンハイム宮廷の音楽家で、フルートやオーボエ奏者、音楽教師を務め、選帝侯カール・テオドールの個人的なフルート指導者でもありました。この家庭環境は、息子のクリスティアンの将来のキャリアにとって極めて有利に働きました。一家のルーツはアルザス地方にあり、この地域とプファルツ選帝侯領の文化的近さが、父がドイツ語とフランス語のバイリンガルであった可能性を示唆しています。もしそうであれば、クリスティアン自身も幼少期に両言語に触れており、後にパリやヴェルサイユを頻繁に訪れ、フランスの貴族社会に入り込むことが比較的容易だったことにつながります。

修業時代

少年時代のカンナビヒは、マンハイム宮廷管弦楽団の指導者であったヨハン・シュターミッツからヴァイオリンの手ほどきを受けました。12歳でこの楽団に学生として入団し、2年後には正団員に昇格しました。1750年、選帝侯カール・テオドールの命により、彼はローマへ留学し、著名なオペラ作曲家ニコロ・ヨンメッリのもとで学びを深めました。1753年までローマに滞在した後、ヨンメッリがシュトゥットガルトの宮廷楽長に就任すると、師を追って当地へ移ります。さらに1756年にはミラノでジョヴァンニ・バッティスタ・サンマルティーニから指導を受けるなど、イタリアで研鑽を積みました。

マンハイム楽派の指導者へ

1757年にシュターミッツが亡くなると、カンナビヒはマンハイムに呼び戻され、カール・ヨーゼフ・トエスキと共にコンサートマスターの職を引き継ぎました。1759年には、プファルツ＝ツヴァイブリュッケン公国の女官であったマリア・エリザベート・デ・ラ・モッテと結婚します。当時の啓蒙思想は身分差を超える関係をある程度許容しましたが、平民出身の男性が貴族階級の女性と結婚するのは依然として稀であり、この結婚はカンナビヒにとって重要な後ろ盾を得る結果となりました。彼らは6人の子をもうけ、息子のカールも作曲家として知られるようになります。娘ローゼはモーツァルトからピアノを学び、彼の『ピアノソナタ第7番』を献呈されています。

カンナビヒは妻の縁を通じてプファルツ＝ツヴァイブリュッケン公クリスティアン4世の庇護を得て、1764年には公爵に伴ってパリへ滞在しました。マンハイムの音楽家たちはパリの聴衆から高い評価を受けており、この訪問中にカンナビヒは、ヨーロッパを巡業中であった幼いモーツァルト一家と出会います。1760年代から1770年代にかけて、彼は頻繁にパリを訪れ、自作曲がコンセール・スピリチュエルで演奏され、楽譜が出版されました。この時期以降のカンナビヒの主要作品の多くはパリで出版されています。

1774年にはマンハイム宮廷管弦楽団の音楽監督に就任し、楽団を率いる傍ら、宮廷バレエのために音楽を作曲しました。1778年、主君カール・テオドールがバイエルン選帝侯となったのに伴い、カンナビヒもミュンヘンへ拠点を移します。しかし、ミュンヘン移転後は楽団のかつての輝きが失われ始め、1780年代には選帝侯による予算削減により楽団員は大幅に減員されました。晩年、俸給が3分の1に減らされたカンナビヒは、生計を立てるために演奏旅行を行う必要に迫られました。これは若い音楽家には珍しくないことでしたが、彼にとっては初めての経験だったと考えられています。

カンナビヒは1798年1月20日、息子カールを訪ねて滞在していたフランクフルト・アム・マインで客死しました。

カンナビヒとモーツァルト

カンナビヒとモーツァルトは約20年間にわたり、何度か顔を合わせています。特に重要なのは、1777年から1778年にかけてモーツァルトが母と共にマンハイムに滞在した時期です。ザルツブルクを出て新たな職や名声を求めていたモーツァルトにとって、18世紀後半ヨーロッパで最高の技量と名声を持つと言われたマンハイムの管弦楽団は非常に魅力的でした。才能ある音楽家たち、厳格な訓練、そして選帝侯からの潤沢な資金によって、この楽団はかつての宮廷礼拝堂付の組織から、力強くしなやかなアンサンブルへと変貌を遂げていました。マンハイム楽派の特徴的な強弱表現、特にクレッシェンドは聴衆を魅了し、気絶する女性がいたという逸話も残されています。

モーツァルト自身もこの楽団を高く評価しており、父レオポルトに宛てた手紙の中でその卓越性を伝えています。彼は主要なミサでオーケストラの演奏を聴き、その規模と構成（多くのヴァイオリン、ヴィオラ、木管楽器、ホルン、チェロ、ファゴット、コントラバスに加えてトランペットとティンパニ）を具体的に挙げ、「これで音楽が良くないわけがない」と記しています。カンナビヒはマンハイム滞在中のモーツァルトと親しく交流し、彼に多くの影響を与えたと考えられています。

主要作品

カンナビヒは多作な作曲家であり、様々なジャンルで作品を残しました。

オペラ：『Azaki』（1778年）
バレエ音楽：40曲
管弦楽曲：交響曲75曲、ヴァイオリン協奏曲3曲
室内楽曲：弦楽四重奏曲12曲、ピアノ三重奏曲6曲、ヴァイオリンソナタ30曲

カンナビヒは、マンハイム楽派の最盛期を築き上げた指導者として、そして近代管弦楽の発展に寄与した作曲家として、音楽史において重要な位置を占めています。彼の作品と指導は、後の古典派音楽、特にハイドンやモーツァルトといったウィーン楽派の巨匠たちにも影響を与えました。

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