クリストファー・チェナリー

クリストファー・チェナリー：サラブレッド競走馬生産のパイオニア

クリストファー・トンプキンス・チェナリー(1886年9月16日-1973年1月3日)は、アメリカ合衆国の実業家で、サラブレッド競走馬の生産者にして馬主として名を馳せました。バージニア州の自らの牧場「メドウ・ステーブル」で、数々の名馬を育て上げ、アメリカ競馬史に大きな足跡を残した人物です。2019年には、その功績を称えられ、アメリカ競馬殿堂入りを果たしました。

生い立ちとキャリア

チェナリーは、バージニア州リッチモンドで生まれました。幼少期は家計を助けるため働きながら、親戚の牧場での乗馬を楽しむなど、馬との関わりも持っていました。ランドルフ・メイコン大学とワシントン・アンド・リー大学で学び、1909年には工学の学位を取得。卒業後はアラスカで鉄道ルート調査に従事し、そこで妻となるヘレンと出会います。結婚後、第一次世界大戦中は陸軍工兵隊で勤務。除隊後はエンジニアとして働きながら、1926年には連邦水道公社（後にガス事業も手掛ける）を設立、その後サウザーンナチュラルガスの代表取締役を務めるなど、事業家として成功を収めました。

メドウ・ステーブルの成功

これらの事業で得た財産を基に、チェナリーは故郷バージニア州で競走馬育成事業に着手し、メドウ・ステーブルを設立します。牧場の成功の鍵を握ったのが、1939年に購入された牝馬ヒルデーンでした。競走成績は平凡でしたが、繁殖牝馬としてその真価を発揮し、1950年の年度代表馬ヒルプリンスや、アメリカ最優秀牝馬に3度輝いたシケイダなどを輩出しました。ヒルデーンとその子孫によって生み出された収益は300万ドルを超え、チェナリーにとって最初の大きな成功となりました。

その後も、インペラトリスという牝馬を3万ドルで購入。この馬からも、数々の活躍馬が生まれました。中でも、サムシングロイヤルは、セクレタリアトの母として知られています。

ニューヨーク競馬界への貢献

チェナリーは、衰退しつつあったニューヨークの競馬界の活性化にも貢献しました。当時、ジョッキークラブの副会長だったオグデン・フィップス、ハリー・グッゲンハイムと共に、グレーターニューヨーク協会（後にニューヨーク競馬協会に改名）を設立。老朽化した施設の改修など、競馬界の近代化に尽力しました。

後期と死後

80歳を超えた頃からは、判断力の衰えが見られるようになり、1967年には貴重な牝馬の売却を決定。家族やスタッフの反対もあり、最終的には3頭の売却で済みましたが、直後に妻ヘレンを亡くします。この出来事がきっかけで健康状態は悪化し、1968年からは入院生活を送り、1973年1月3日に86歳で亡くなりました。

チェナリーの死後も、メドウ・ステーブルは娘ペニーによって経営が継続されました。1972年にはリヴァリッジがケンタッキーダービーを制覇、翌1973年にはセクレタリアトが三冠馬に輝き、メドウ・ステーブルは2年連続で最優秀生産者・最優秀馬主賞を受賞。セクレタリアトとペニーの物語は、2010年に映画『セクレタリアト/奇跡のサラブレッド』として制作され、広く知られることとなりました。

チェナリーは、優れた事業手腕と、馬への深い愛情によって、アメリカ競馬史に輝く数々の名馬を生み出しました。彼の功績は、現在も競馬界に大きな影響を与え続けています。そして、彼と娘ペニーは、親子二代でアメリカ競馬殿堂入りを果たし、その功績は永遠に語り継がれることでしょう。

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