クリストフォロ・ディ・メッシスブーゴ

クリストフォロ・ディ・メッシスブーゴ（15世紀～1548年）は、ルネサンス期イタリアで活躍した、名高い宮廷料理人です。フェラーラのエステ家、アルフォンソ1世と、その子エルコレ2世に仕え、1524年から1548年までその卓越した技で数々の華麗な宴を彩りました。

彼の名は、単に料理人としてだけでなく、宮廷行事における優れた司会進行役としても知られています。その高い能力は広く認められ、1533年には神聖ローマ皇帝カール5世から宮中伯の称号を授与される栄誉に浴しました。

ディ・メッシスブーゴの真価は、彼の死後に出版された料理書『Banchetti, composizioni di vivande e apparecchio generale（宴席：食べ物と諸々の道具立ての構成）』（1549年）に如実に表れています。この書物は、単なるレシピ集ではありません。エステ家の宮廷における公式晩餐会の詳細な計画から、メニュー、食材の調達、装飾、調理器具に至るまで、当時の宮廷料理のあらゆる側面を網羅した、極めて実践的なマニュアルです。

現代の料理人にとっても、この書物は貴重な資料となっています。様々なレシピが紹介されているだけでなく、食材の選定から調理、盛り付け、そして宴会場の設えに至るまで、当時の料理文化の全貌が垣間見られます。なかには、現代でもフェラーラ地方で受け継がれている料理もあり、歴史と伝統が息づく、まさにタイムカプセルのような一冊と言えるでしょう。

特に注目すべきは、キャビアに関する記述です。16世紀のポー川流域ではオオチョウザメが豊富に漁獲され、キャビアは貴重な食材でした。ディ・メッシスブーゴの著作は、イタリア最古のキャビアの調理法を伝える文献であり、生食用と保存用の両方の方法が詳細に記されています。

彼の料理への情熱と、宮廷における高い地位は、彼がフェラーラのベネディクト会の修道院Sant'Antonio in Polesineの附属教会に埋葬されたことからも伺えます。

ディ・メッシスブーゴの著作は『Banchetti, composizioni di vivande e apparecchio generale』以外にも、『Libro novo nel qual si insegna a far d'ogni sorte di vivanda』（1564年、ヴェネツィア出版）が存在します。これらの書物は、現代の料理研究においても重要な文献として、今もなお高く評価されています。彼の功績は、単なる宮廷料理人の枠を超え、ルネサンス期のイタリア料理文化を代表する人物として、歴史に刻まれていると言えるでしょう。彼の残した料理書は、単なるレシピ集以上の価値を持ち、当時の食文化や社会構造、そして宮廷生活の一端を垣間見せてくれる貴重な資料として、現在も世界中の料理研究家や歴史家によって研究されています。

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