クリミア地方政府

クリミア地方政府：1918年から1919年のクリミア半島自治政府

1918年から1919年にかけて、クリミア半島にはクリミア地方政府（クリミア辺境政府とも呼ばれる）が存在しました。十月革命後の混乱期に誕生したこの政府は、複雑な国際情勢と国内勢力抗争の渦中にありました。

成立と政治体制

1917年のロシア革命後、クリミア・タタール人によってクリミア人民共和国が宣言されましたが、すぐにボリシェヴィキに制圧され、タヴリダ・ソビエト社会主義共和国となりました。しかし、ドイツ帝国の支援を受けたウクライナ軍の攻勢によりボリシェヴィキは追われ、1918年6月25日、クリミア地方政府が成立しました。

初代首相にはマツェイ・スリケヴィチ将軍が就任し、内相、軍務相を兼務しました。閣僚にはクリミア・タタール人やロシア人、ドイツ系住民らが名を連ね、多様な民族構成が見て取れます。政府は独自の軍隊や通貨、国家シンボルを制定し、ボリシェヴィキによって廃止された私有財産を復活させました。しかし、その実態はドイツ占領軍の強い影響下にあるものでした。スリケヴィチ将軍らはドイツへの接近を図り、クリミアの独立と交易関係の樹立を求めてベルリンを訪問しましたが、ドイツの提案したクリミア・ハン国再建計画は実現しませんでした。

ウクライナとの関係

クリミア地方政府はウクライナ人民共和国との関係構築にも努めました。広範な自治権を持つクリミアとウクライナによる連邦構想も模索されましたが、最終的にはドイツの保護下でウクライナからの独立を維持しました。

終焉

ドイツ軍の撤退後、スリケヴィチ将軍は失脚し、ソロモン・クリムが新たな首相に就任しました。この政府は自由主義と反ボリシェヴィズムを掲げ、ウラジーミル・ナボコフ（作家ウラジーミル・ナボコフの父）も法相として参加していました。しかし、連合国の撤退後、白軍との関係が悪化し、政府運営は困難を極めました。1919年初頭、赤軍がシンフェロポリを占領し、クリミア地方政府は崩壊しました。その後、クリミアは赤軍、白軍の支配が入れ替わる中で、ソビエト連邦の一部となり、1954年にはウクライナ・ソビエト社会主義共和国に編入、ソ連崩壊後もウクライナの領土として現在に至っています。

まとめ

クリミア地方政府は、ロシア革命後の混乱と国際情勢の変動の中で、短命ながらクリミア半島の歴史に重要な役割を果たした自治政府でした。ドイツの保護下での成立、ウクライナとの複雑な関係、そして白軍との対立など、その存在は当時のクリミアにおける政治的、地政学的状況を如実に反映しています。クリミアの歴史を理解するためには、この短期間の政府の活動を知ることは不可欠です。

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