クリミアの歴史

クリミア半島の歴史：民族の交錯と紛争の地

クリミア半島は、黒海の北に位置する戦略的に重要な地域です。その歴史は古く、紀元前から様々な民族の興亡と支配が繰り返されてきました。ここでは、クリミア半島の複雑な歴史を詳細に解説します。

先史時代

クリミア半島における人類の居住は、旧石器時代中期に遡ります。キイク・コバ洞窟からは約8万年前のネアンデルタール人の痕跡が発見されており、初期の現生人類の化石もブルハン・カヤ洞窟で発見されています。この地域は、最終氷期の寒冷期において、中・北ヨーロッパへの再拡散の拠点となる重要な避難場所でした。新石器時代には、農業は行われず、陶器製造の開始、石器製造技術の変化、豚の家畜化が特徴でした。

紀元前3千年紀には、ヤムナ文化がクリミアに到達し、青銅器時代初期には、東イラン語群を話すスキタイ人が定住しました。半島南部には、スキタイ人に駆逐されたキンメリア人の一派であるタウロイ人が居住していました。紀元前6世紀または7世紀には、ミレトス人によって最初のギリシア植民都市が建設されました。

古代

ギリシア時代

古代ギリシア人は、クリミア半島を「タウリカ」と呼びました。ギリシア神話には、ミケーネの王女イピゲネイアがタウリカに送られる物語が登場します。紀元前5世紀には、ギリシア人が黒海沿岸に植民を開始し、ケルソネソス、テオドシア、パンティカパイオンなどの都市を建設しました。これらの都市は、アテネと緊密な関係を築き、麦や蜂蜜などの商品を供給しました。

ローマ時代

紀元前1世紀、タウリカの一部はローマ帝国に併合されました。ローマ軍はカラクスに駐留し、遊牧民スキタイからケルソネソスなどの交易地を防衛しました。3世紀には、ゴート族がクリミアに侵入し、ローマ人とボスポロス王国を攻撃しました。ローマ軍は3世紀末に駐屯地を放棄しました。

中世

遊牧民の流入

ローマ人の撤退後、クリミアはフン人、ブルガール人、ハザール人、キプチャク人など、様々な遊牧民族の侵入を受けました。これらの民族は、クリミア半島のステップ地帯を支配し、テュルク諸語がこの地域の共通語となりました。

ルーシと東ローマによる支配

10世紀中頃、クリミア半島の東部はキエフ大公国のスヴャトスラフ1世によって征服され、トムタラカニ公国の一部となりました。988年には、ウラジーミル1世がケルソネソスを占領し、キリスト教に改宗しました。9世紀から11世紀にかけて、半島の南端部は東ローマ帝国の支配下に置かれました。

モンゴルの征服と中世後期のクリミア

13世紀前半、モンゴル帝国がクリミア半島を征服し、ジョチ・ウルスの支配下に入りました。ジェノヴァ共和国は、クリミア南端の黒海沿岸にカッファなどの拠点を築きました。14世紀には、テオドロ公国がクリミア半島の南西部で独立しましたが、後にオスマン帝国によって滅ぼされました。

近世

クリミア・ハン国（1441年–1783年）

1441年、ジョチ・ウルスの崩壊後、ハジ・ギレイがクリミア・ハン国を建国しました。クリミア・ハン国は、オスマン帝国の属国となり、高度な自治権を認められていました。クリミア・タタール人は、ウクライナへの襲撃を繰り返し、捕虜を奴隷としてオスマン帝国の市場に供給しました。

近現代

ロシア帝国期（1783年–1917年）

1783年、ロシア帝国はクリミア・ハン国を併合し、タヴリダ州を設置しました。19世紀には、ロシア人、ウクライナ人、ドイツ人がクリミアに移住しました。クリミア戦争（1853-1856年）では、クリミアが主戦場となり、社会・経済に大きな影響を与えました。

ロシア内戦期（1917年-1921年）

ロシア革命後、クリミアはロシア内戦の舞台となり、様々な政権が交代しました。最終的に、白軍が赤軍によって撃破され、クリミアはソビエト連邦の一部となりました。

ソビエト連邦期（1922年-1991年）

1921年、クリミア自治ソビエト社会主義共和国が発足しました。1944年、スターリン政権はクリミア・タタール人を中央アジアへ強制移住させました。1954年、クリミア州はロシアからウクライナへ移管されました。

ソ連崩壊とウクライナの独立（1991年）

ソ連崩壊後、クリミアはウクライナの一部となりました。クリミア・タタール人の帰還が許可されましたが、ロシア系住民の中にはロシアへの帰属を求める者もいました。

ロシアによるクリミア併合宣言（2014年）

2014年、ロシアはクリミアを一方的に併合しました。この併合は、国際社会の承認を得ていません。現在、クリミアはロシアの実効支配下にあり、ウクライナとの間で領有権をめぐる対立が続いています。

まとめ

クリミア半島の歴史は、様々な民族の興亡と支配が繰り返されてきた複雑なものです。その戦略的な重要性から、常に紛争の火種となってきました。今後のクリミア半島の行方は、国際社会の動向に大きく左右されるでしょう。

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