クルスク (原子力潜水艦)

原子力潜水艦「クルスク」

原子力潜水艦クルスク（ロシア語名: Атомная подводная лодка «Курск」）は、949A型アンテーイに属し、ロシア海軍の巡航ミサイル潜水艦として設計されました。この艦艇は、1990年代初頭に建造が始まり、1994年に進水を迎えました。1999年には就役し、ロシア北方艦隊に配備されました。クルスクの戦歴は悲劇的で、2000年8月にバレンツ海で沈没し、全乗員が命を落とすこととなってしまいました。その名は、1943年のクルスクの戦いに由来しています。

建造と性能

クルスクはソヴィエト時代に設計された最後のオスカーII型原子力潜水艦の一つで、全長はオスカーI型よりも10メートル長くなっています。上級将校のための個室や艦内運動場など、艦艇の設備は非常に充実していました。

艦体は非常に強固で、特に耐腐食性に優れたステンレス鋼が使用されていました。また、北極の氷を越える航行にも耐えられるように設計され、最長120日間の持続潜航が可能でした。武装面では、24本のP-700グラニート巡航ミサイルと、艦首に533mmおよび650mmの魚雷発射管を備えていました。グラニートミサイルは550kmの射程を持ち、的確に目標を攻撃する能力を有していました。

配備と運用

クルスクは配備されてから5年間の間に、ほとんど任務を遂行することはありませんでした。唯一の任務は1999年のコソボ紛争に対する監視任務で、6ヶ月間地中海に配備されたものでした。その後、1990年代の混乱や予算削減により、北方艦隊は深刻な運用上の問題を抱えることになります。多くの潜水艦が捨てられている状況となり、乗員の経験も不足していました。

演習と沈没事故

クルスクは2000年8月10日から、大規模海軍演習に参加していました。この演習では、数十隻の艦艇が参加し、クルスクは模擬弾頭を積んだ状態で演習を行っていました。8月12日、発射準備中に爆発が発生し、艦艇は沈没しました。この爆発は、過酸化水素を燃料とする魚雷の損傷が原因とされており、その結果、乗員118名のほとんどが命を落としました。

救助の試みと影響

事故発生後、アメリカや他国の海軍から救助の申し出がありましたが、ロシア政府はこれを拒否しました。乗員たちの中には、爆発後も生き残る者がいたが、最終的には全員が死亡したことが確認されました。この悲劇的な事故は、ロシアの海軍と政府に大きな衝撃を与えました。

復旧作業

沈没から1年後、正式にクルスクは回収されました。オランダの企業が引き揚げ作業を行い、艦の残骸は分析のために持ち帰られました。この回収作業は非常に慎重を要するもので、多くのリスクが伴いました。最終的に、クルスクの主要な部分は解体され、事故の原因として焦点が当てられた高濃度過酸化水素に関連する問題が報告されました。

まとめ

クルスクの悲劇は、潜水艦技術や軍事運用における監視管理の重要性を浮き彫りにしています。この事故に関しては、多くの議論があり、訓練不足や整備不良が災厄を招いたとの見解も存在します。クルスクの沈没事故は、海軍史において忘れられない出来事として記憶されています。

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