クレモナの戦い

クレモナの戦い：奇襲と失態が交錯した一日

1702年2月1日、スペイン継承戦争のさなか、ロンバルディア地方の都市クレモナで、オーストリア軍とフランス軍が激突しました。この戦いは、プリンツ・オイゲンの大胆な奇襲作戦と、フランス軍司令官の失態によって、歴史に名を刻むことになります。

戦いの背景

前年のキアーリの戦いでフランス軍に勝利したオーストリア軍でしたが、フランス軍は依然としてミラノ公国に駐屯し、両軍はマントヴァ公国で睨み合いを続けていました。しかし、オーストリア軍は政府からの給与の遅配に苦しみ、兵士たちは食糧不足に悩まされていました。この閉塞状況を打破するため、オイゲンは奇襲作戦を決意します。

奇襲作戦の実行

オイゲンはクレモナに関する情報を収集し、1月31日から2月1日にかけての夜、クレモナへひそかに移動しました。地元の聖職者の協力を得て下水道から侵入し、クレモナの門を開けて町へ突入。奇襲は成功し、フランス軍司令官のヴィルロワ公を含む幹部たちは寝込みを襲われ、捕虜となりました。

戦いの結果

しかし、フランス軍のアイルランド兵の反撃により、オーストリア軍はクレモナの完全制圧を断念せざるを得ませんでした。とは言え、オーストリア軍の損害は500人と少数にとどまり（フランス軍は1000人）、オイゲンの作戦は一定の成功を収めたと言えるでしょう。

ヴィルロワ公の失態

奇襲を許したヴィルロワ公は、フランス宮廷から激しい非難を浴びました。さらに、彼を風刺する歌が流行し、評判を大きく落とすことになります。戦後、ヴィルロワ公は身代金を支払われて解放され、スペイン領ネーデルラントへ転任。イタリア方面司令官には、ヴァンドーム公ルイ・ジョゼフ・ド・ブルボンが任命され、オイゲンと対峙することになりました。

戦いの意義

クレモナの戦いは、スペイン継承戦争における一局面であり、オーストリア軍の奇襲作戦と、フランス軍司令官の失態が戦局に影響を与えた戦いとして記憶されています。この戦いの後、戦況は新たな局面を迎え、両軍はさらなる激戦を繰り広げることになります。

参考文献

宮本絢子『ヴェルサイユの異端公妃―リーゼロッテ・フォン・デァ・プファルツの生涯』鳥影社、1999年。
友清理士『スペイン継承戦争 マールバラ公戦記とイギリス・ハノーヴァー朝誕生史』彩流社、2007年。
* デレック・マッケイ著、瀬原義生訳『プリンツ・オイゲン・フォン・サヴォア-興隆期ハプスブルク帝国を支えた男-』文理閣、2010年。

もう一度検索