ルイ・ジョゼフ・ド・ブルボン

ルイ・ジョゼフ・ド・ブルボン：波乱に満ちた生涯

ルイ・ジョゼフ・ド・ブルボン（1654年7月1日 - 1712年6月11日）は、フランスの貴族であり、軍人として名を馳せました。ボーフォール公、ヴァンドーム公という称号を持ち、大同盟戦争やスペイン継承戦争といった、ヨーロッパの命運を左右する戦いにおいて司令官を務めました。彼は、アンリ4世とガブリエル・デストレの孫であるヴァンドーム公ルイ2世と、ロール・マンシーニの間にパリで生まれました。また、オーストリアの司令官として知られるプリンツ・オイゲンは、母方の従弟にあたります。

生涯

1669年、ルイ・ジョゼフは叔父であるボーフォール公フランソワがオスマン帝国との戦いで戦死したことを受け、さらに父の死によってボーフォール公位とヴァンドーム公位を継承しました。しかし、幼少であったため、母方の叔母であるマリア・アンナ・マンチーニに養育されることとなります。

18歳で軍に入隊したルイ・ジョゼフは、すぐに仏蘭戦争でその才能を発揮し、1688年には陸軍中将にまで昇進しました。大同盟戦争においては、ステーンケルケの戦いでリュクサンブール公フランソワの下で、マルサリーアの戦いではニコラ・カティナの下で、その異彩を放ちました。1695年にはカタルーニャにおける司令官を任ぜられ、1697年にはバルセロナを攻略し、その功績が認められてフランス元帥となりました。

スペイン継承戦争が勃発すると、1702年にフランスはカティナとヴィルロワ公を相次いでイタリアに派遣しましたが、いずれもプリンツ・オイゲン率いるオーストリア軍に敗北を喫しました。そこで、ルイ14世はヴァンドーム公にイタリア戦線の指揮を命じました。1702年8月15日のルッザーラの戦いではオイゲンに大敗を喫したものの、1704年からは攻勢に転じ、1705年8月16日のカッサーノの戦いではオイゲンに勝利するという大きな戦果を挙げました。

しかし、翌1706年4月19日、オイゲンがウィーンに滞在している隙を突いてカルチナートの戦いでも勝利を収めたものの、ラミイの戦いにおいてヴィルロワがイギリス軍司令官である初代マールバラ公爵ジョン・チャーチルに大敗したため、戦線を修復すべく8月にヴィルロワに代わってフランドルへ派遣されることとなりました。イタリア戦線には、後任としてマルサンとオルレアン公フィリップ2世が派遣されましたが、9月7日のトリノの戦いでオイゲンに敗北し、フランス軍はイタリアから撤退を余儀なくされました。

フランドルへ移動したヴァンドーム公は、南ネーデルラントを戦場として同盟軍と戦いましたが、フランス王ルイ14世が孫であるブルゴーニュ公ルイを指揮官としてネーデルラントへ送り込むと、ブルゴーニュ公と意見が対立するようになります。1708年のアウデナールデの戦いでは、マールバラ公とオイゲンが率いる同盟軍と交戦しましたが、ブルゴーニュ公からの援軍が得られなかったことが一因となり、大敗を喫してしまいました。リール包囲戦では、ブルゴーニュ公やベリック公と共に包囲軍の補給路を断とうとしましたが、ベリックとも仲違いして離脱され、さらにリールが同盟軍に落とされると、ヘント防衛から引き上げさせられ、帰国後はブルゴーニュ公との対立が尾を引き、指揮権も取り上げられてしまいました。

その後、軍務に嫌気がさしたヴァンドーム公は、所領へ引退しましたが、1710年にスペイン王フェリペ5世（ルイ14世の孫、ブルゴーニュ公の弟）から召喚され、スペイン軍の指揮を執ることとなりました。ブリウエガの戦い、ビジャビシオーサの戦いで勝利を重ね、スペイン王を助けました。しかし、戦争終結を目前にした1712年6月11日、ビナロスで急死し、エル・エスコリアル修道院へ埋葬されました。死の2年前に結婚した妻マリー・アンヌとの間に子供はなく（同性愛傾向があったためとも言われています）、ヴァンドーム公位は弟のフィリップが継承しました。

参考文献

友清理士『スペイン継承戦争 マールバラ公戦記とイギリス・ハノーヴァー朝誕生史』彩流社、2007年。

関連項目

ヴァンドーム公

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