クロアチアディナール

クロアチア・ディナールとは

クロアチア・ディナール（Hrvatski Dinar）は、1991年12月23日から1994年5月30日までの短期間、クロアチア共和国で流通していた法定通貨です。ISO 4217コードはHRDで、複数形はディナーラ（Dinara）です。

導入の背景

1991年6月25日、ユーゴスラビアからの独立を宣言したクロアチアは、当時流通していたユーゴスラビア・ディナールを自国通貨に切り替えることを決定しました。この決定により、クロアチア国立銀行は新通貨の仕様策定、現金の設計、調達、流通という非常に重要な課題に、短期間で対応する必要に迫られました。

さらに、クロアチアはユーゴスラビア軍や国内のセルビア人勢力との大規模な紛争に巻き込まれ、経済的な混乱が深刻化していました。こうした困難な状況下で、クロアチア国立銀行はわずか3ヶ月で紙幣のデザインを完成させ、スウェーデンの印刷会社で製造された紙幣を、欧州共同体（EC）の通商禁止措置を回避しながらザグレブに輸送することに成功しました。そして、1991年12月23日にユーゴスラビア・ディナールと等価で、クロアチア・ディナールの発行が開始されました。

流通とインフレーション

クロアチア・ディナールは、クロアチア共和国だけでなく、ヘルツェグ＝ボスナ・クロアチア人共和国など、ボスニア・ヘルツェゴビナ内のクロアチア人居住地域でも、ドイツマルクと並行して使用されました。一方、クライナ・セルビア人共和国が占拠した地域では、クライナ・ディナールやユーゴスラビア・ディナールが流通していました。

流通開始時のレートは1ドイツマルク＝55ディナールでしたが、紛争による戦況の悪化とともに、クロアチア・ディナールは急激なインフレーションに見舞われました。1992年8月には1ドイツマルク＝544ディナール、1994年には1ドイツマルク＝4000ディナールにまでレートが下落しました。

通貨の終焉

インフレーションが深刻化する中、1994年5月30日に新通貨クーナが発行され、1クーナ＝1000クロアチア・ディナールの比率で交換が行われました。これにより、クロアチア・ディナールはその役割を終えました。

紙幣について

初期に発行された紙幣は、1、5、10、25、50、100、500、1000ディナールで構成されていました。これらの紙幣の表面には、ドゥブロヴニク出身の天文学者であり数学者であるルジェル・ヨシプ・ボスコヴィッチの肖像が描かれ、裏面にはザグレブ大聖堂が縦方向に描かれていました。

スウェーデンで印刷された関係から、25ディナール紙幣は5スウェーデン・クローナ紙幣の用紙が使用され、透かしも共通していました。

1992年8月には5000ディナール紙幣、同年10月には2000ディナール紙幣が発行され、1993年にはさらにインフレーションが進行したため、1万、5万、10万ディナール紙幣が順次発行されました。これらの紙幣には、潜像や紫外線発光インキなどの偽造防止技術が導入され、裏面の図柄はイヴァン・メシュトロヴィチ作の彫刻「クロアチア人の歴史(Povijest Hrvata)」に変更されました。

参考文献

『Stvaranje hrvatske nacionalne valute』クロアチア国立銀行、2014年。

関連項目

クーナ - 1994年から2022年までのクロアチア共和国の通貨。
クロアチアの歴史
クロアチアの経済

外部リンク

クロアチア国立銀行: クロアチア通貨導入20周年記念式典のスピーチ（クロアチア語）
Papirnati novac hrvatski dinar 1991-1994（クロアチア語）

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