クロタミトン

クロタミトンとは

クロタミトン（INN：crotamiton）は、主に鎮痒薬及び疥癬治療薬として広く使用される外用薬です。一般的に「かゆみ止め」として知られ、多くの消炎鎮痛外用薬にも成分として配合されています。

作用機序

鎮痒薬としての効果

クロタミトンは、抗ヒスタミン薬や局所麻酔薬、抗炎症薬とは異なるメカニズムでかゆみを抑えると考えられています。具体的には、皮膚や末梢神経内で作用するイオンチャネル、TRPV4（トランジェントレセプター・ポテンシャル・バニロイド4）を抑制することが報告されています。このため、クロタミトンを塗布すると、軽い灼熱感を伴う温覚刺激が生じ、これがかゆみの感覚を効果的に軽減する効果をもたらすと言われています。

疥癬治療薬としての特性

疥癬の原因となるヒゼンダニに対して、クロタミトンは弱い毒性を示します。これにより、疥癬の治療においても使用されることがあります。

薬物動態

皮膚に塗布されたクロタミトンは、皮膚を通じて吸収され、体内に循環します。血中での半減期は約30.9時間であり、その4.8〜8.8パーセントが尿中に排泄されることが知られています。

用法

皮膚瘙痒症への使用

皮膚のかゆみを抑制する目的で使用されます。虫刺されなどによるかゆみの緩和には、かゆみがある部位にのみ塗布し、4〜8時間ごとに繰り返すことが推奨されます。ただし、眼の近くや傷口には使用を避けるべきです。また、小児のストロフルス治療にも用いられます。

疥癬への使用

疥癬治療薬としては、全身の皮膚に毎日塗布し、約24時間後に洗い流すことを数日間繰り返します。疥癬に関しては、ヒゼンダニを駆除するために、外用殺虫剤（例えばフェノトリン）や、より効果が速いペルメトリンを使用することもあります。抵抗性がある場合は、内服薬のイベルメクチンが処方されることもありますが、これは副作用が多いため外用薬が好まれます。

副作用

外用薬特有の副作用の一つとして接触性皮膚炎が挙げられ、クロタミトンでも同様の症状が現れる可能性があります。また、塗布時に熱感や刺激感が生じることも報告されています。過剰に使用するとメトヘモグロビン血症を引き起こす恐れもあるため、使用には注意が必要です。

歴史

クロタミトンは1948年にガイギー社によって合成され、同年スペインで外用薬として発売されました。当初は疥癬治療に特化した製剤でしたが、その後、優れたかゆみ止めとしての効果が認められるようになりました。日本では1957年から市販が開始されています。

環境中での挙動

使用後は洗浄されて下水に流入すると考えられるクロタミトンが、下水処理場で検出されることがあります。その濃度は、河川のそれよりも高いとされており、環境中での影響が懸念されています。

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