クロッシングス (ハービー・ハンコックのアルバム)

アルバム『クロッシングス』について

『クロッシングス』（Crossings）は、アメリカのジャズ界の重鎮、ハービー・ハンコックが1972年に発表したスタジオ・アルバムです。この作品は、音楽的冒険心と革新性が色濃く反映されており、特に当時注目されていたモーグ・シンセサイザーを駆使して生み出された新しい音楽スタイルを示しています。

背景

『クロッシングス』の制作過程では、ハンコックのマネージャー、デヴィッド・ルービンソンが機材のセッティングをパトリック・グリーソンに依頼していた経緯があります。当初の計画ではハンコック自身がモーグ・シンセサイザーを演奏する予定でしたが、最終的にはグリーソンがその役割を担い、オーバー・ダビングを通じてアルバムに独自の彩りを加えました。

特に、「スリーピング・ジャイアント」という楽曲は、アフリカ音楽からの影響を色濃く反映した作品であり、冒頭部分では全メンバーによるパーカッションの力強い演奏が印象に残ります。『クロッシングス』は、ハンコックがコロムビア・レコードに移籍後初のアルバムであり、翌年にリリースされる『セクスタント』においても、この作品の実験的な手法が引き継がれていくことになります。

反響・評価

本作はアメリカでは非常に高い評価を受け、特に『ビルボード』のジャズ・アルバム・チャートでは10位にランクインしました。音楽批評家のリチャード・G・ギネルは、オールミュージックにおいて満点の5点を与え、次のように評論しています。「『クロッシングス』はより独特のエレクトリック・アヴァンギャルドに突き進んでおり、パトリック・グリーソンのモーグ・シンセサイザーが生み出す音は、明確な音程があったりなかったりする電気的な装飾によって、バンドの宇宙的なサウンドを際立たせている」とのことです。

収録曲

• - スリーピング・ジャイアント - "Sleeping Giant" (Herbie Hancock) - 24:38
• - クエーサー - "Quasar" (Bennie Maupin) - 7:22
• - ウォーター・トーチャー - "Water Torture" (B. Maupin) - 13:58

参加ミュージシャン

このアルバムには、ハービー・ハンコックをはじめ、多彩な才能が結集しており、各々が持ち味を生かした演奏を展開しています。

• - ハービー・ハンコック - ピアノ、エレクトリックピアノ、メロトロン、パーカッション
• - エディ・ヘンダーソン - トランペット、フリューゲルホルン、パーカッション
• - ジュリアン・プリースター - アルトトロンボーン、テナートロンボーン、バストロンボーン、パーカッション
• - ベニー・モウピン - ソプラノサクソフォーン、バスクラリネット、ピッコロ、アルトフルート、パーカッション
• - バスター・ウィリアムス - ダブル・ベース、エレクトリックベース、パーカッション
• - ビリー・ハート - ドラムス、パーカッション
• - パトリック・グリーソン - モーグ・シンセサイザー
• - ヴィクター・パントージャ - コンガ
• - キャンディ・ラヴ、サンドラ・スティーヴンス、デラ・ホーン、ヴィクトリア・ドマガルスキ、スコット・ビーチ - ボーカル

このように『クロッシングス』は、ハービー・ハンコックの挑戦的な音楽性と、参加ミュージシャンたちの個性が見事に融合した傑作アルバムであり、ジャズの枠を超えた新しい音楽の探求が感じられます。

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