クロノクロミー

オリヴィエ・メシアンが1959年から1960年にかけて作曲した大オーケストラのための管弦楽曲。

概要

演奏時間は20分あまりです。曲の題名『クロノクロミー』（Chronochromie）は、古代ギリシア語で「時間」を意味するχρόνοςと「色」を意味するχρῶμαを組み合わせた造語であり、「時間の色彩」という概念を表しています。この作品は、メシアンが自身の音楽語法をさらに発展させた重要な一歩と位置づけられています。

この楽曲では、メシアンが他の多くの作品と同様に、鳥たちの声や、風、滝といった自然界の音を素材として取り入れています。しかし、それらを扱う手法として、彼は32の音価（持続）の列を、「均斉置換（permutation symétrique）」と呼ばれる独特な操作によって変形させる技法を使用しています。均斉置換とは、ある音価の列に対して特定の規則に基づいた置換を繰り返し適用すると、元の列に戻るという性質を持つものです。これは、音程における移調の限られた旋法にリズム的な側面から対応するものと解釈することもできます。この技法により、メシアンは時間の流れの中に多様なリズム的色彩やテクスチュアを生み出しました。

編成上の特徴として、メシアンの管弦楽作品としては珍しく独奏ピアノが使用されていません。ピアノが用いられていない大規模な後続作品は、『われ死者の復活を待ち望む』、『彼方の閃光…』、そしてオペラ『アッシジの聖フランチェスコ』といった限られた作品のみです（ただし後者ではオンド・マルトノが使用されています）。

構成

楽曲の構成は、古代ギリシアの頌歌に見られる「ストロペー（Strophe）」、「アンティストロペー（Antistrophe）」、「エポード（Épôde）」という三部形式の原理に着想を得ており、全体は以下の7つの部分から成っています。この構成方法は、『鳥のカタログ』の一部ですでに試みられていました。

1. イントロダクション Introduction
2. ストローフI Strophe I
3. アンティストローフI Antistrophe I
4. ストローフII Strophe II
5. アンティストローフII Antistrophe II
6. エポード Épôde
7. コーダ Coda

アンティストローフIでは、木管楽器が奏でるウタツグミの鳴き声と、シロフォンなどが表現するヒバリの鳴き声が交互に現れます。アンティストローフIIはこれらの変形であり、楽曲中で最も演奏時間の長い部分です。

中でも最も特徴的なのはエポードです。この部分は他のセクションから独立しており、18名の弦楽器奏者（ヴァイオリン12名、ヴィオラ4名、チェロ2名）がそれぞれ異なる鳥の歌を同時に演奏します。この約4分間にわたる密度の高いパッセージでは、個々の声部を聞き分けることは極めて困難であり、メシアン自身が「組織された無秩序（désordre organisé）」と表現した独自のポリフォニーが展開されます。この「組織された無秩序」を生み出す技法は、後に彼の唯一のオペラ『アッシジの聖フランチェスコ』における「鳥たちへの説教」の場面でさらに発展的に用いられました。

コーダは、冒頭のイントロダクションと同じ音楽素材を用いて楽曲を締めくくります。

作曲と初演

本作は、1959年に翌年開催されるドナウエッシンゲン音楽祭からの委嘱を受けて作曲が開始されました。初演は1960年10月16日、ドナウエッシンゲンにおいて、ハンス・ロスバウトの指揮で行われましたが、その革新的な内容から聴衆や批評家の間で賛否両論が巻き起こりました。フランス初演は1961年9月13日、ブザンソン国際音楽祭でジョルジュ・プレートルによって行われ、ここでも音楽批評家たちの間で論争を巻き起こしました。さらに1962年2月13日には、パリのシャンゼリゼ劇場での公演において、アンタル・ドラティの指揮に対し、一部の敵対的な聴衆が騒ぎ出すという騒動が発生しました。しかしながら、こうした物議を醸す一方で、その音楽的価値は徐々に認められ、他の指揮者たちもこの作品をレパートリーに取り上げ、現代音楽の重要な作品として成功を収めていきました。

楽器編成

本作品は、以下の大規模なオーケストラ編成のために書かれています。

ピッコロ 1
フルート 3
オーボエ 2
コーラングレ 1
小クラリネット 1
クラリネット（B♭管およびA管） 2
バスクラリネット 1
ファゴット 3
ホルン 4
ピッコロトランペット 1
トランペット（C管） 3
トロンボーン 3
テューバ 1
打楽器群: グロッケンシュピール、シロフォン、マリンバ、鐘、ゴング（3つ）、サスペンデッドシンバル、チャイナシンバル、タムタム
* 弦楽器群: ヴァイオリン（16名以上）、ヴィオラ（16名以上）、チェロ（14名以上）、コントラバス（12名以上）。これらのパートは細かく分割（ディヴィジ）して演奏されます。

その他の使用例

『クロノクロミー』は、公共放送でも使用されたことがあります。1969年、アメリカ合衆国の教育テレビ放送NET（現在の公共放送PBSの前身）では、カラー番組の放送開始時に、本作のアンティストローフIIからシロフォンによるヒバリの歌の部分がBGMとして流されました。同年放送が開始された人気子供向け番組『セサミストリート』のシーズン1の冒頭でも、同じパートが使用されたと記録されています。

もう一度検索