クロロアセトフェノン

クロロアセトフェノン (CN) の詳細

クロロアセトフェノン（正式名称：Chloroacetophenone、略称：CN）は、主に催涙剤として用いられる化合物です。一般的には防犯目的の催涙スプレーとして市販されており、世界中の警察機関でも暴徒鎮圧の際に使用されています。日本の警察もこの化合物を保有しており、他の防犯器具とともに有効に機能しています。しばしば「CNガス」または「塩化フェナシル」とも呼ばれます。

身体への影響

クロロアセトフェノンは、目に入った場合に強烈な痛みを引き起こし、大量に接触すると一時的な失明を引き起こす可能性があります。また、涙や鼻汁の分泌が増加し、呼吸器に入ることで激しいくしゃみを伴います。これらの症状は急激に発現しますが、通常は30分程度で回復します。ただし、呼吸困難に陥った場合には、窒息や肺水腫のリスクがあるため、迅速な救急搬送や入院治療が求められます。

刺激の強さ

CNの刺激閾値は約0.3～1.5mg・min/m3で、ICt50値は5～15mg・min/m3、致死量の尺度であるLD50は8,500～25,000mg・min/m3に設定されています。この数字は、特に大量露出の危険性を示しています。

応急処置

万が一目にクロロアセトフェノンが入った場合は、大量の流水または生理食塩水で15分以上洗眼することが推奨されます。皮膚に付着した際は、刺激の少ない石鹸を使用し、多量の水で洗うことが重要です。また、炭酸水素ナトリウムがある場合、それを水に溶かして使用することも効果的です。水が不足している環境下では、逆に刺激が増大する危険があるため、注意が必要です。

予防策

クロロアセトフェノンによる曝露を避けるために、ガスマスクやゴーグル、安全メガネ、マスク、長袖の服、長ズボンなどの着用が推奨されます。これにより、肌や粘膜を噴霧から保護します。また、この化合物はアルカリ性水溶液に弱いため、消石灰や炭酸ナトリウムを水に溶解させたものを用意しておくと、万が一の際に効果的に利用できます。

歴史

クロロアセトフェノンは1871年にドイツの化学者Graebeによって初めて合成されました。そして1918年にはアメリカ合衆国において催涙剤としての商品化が進められました。日本の陸軍ではこの物質が「みどり剤」と呼称されていたことも注目に値します。

製造法

この化合物は、アセトフェノンと氷酢酸を混ぜて加熱・攪拌することで合成されます。その後、冷却しながら塩素ガスを吹き込み、油脂状の塊を形成します。その塊を濾過し、アルコールで溶解させてから再結晶化を行うことで精製されます。さらに、別の合成方法としては、ベンゼンとクロロアセチルクロリドを塩化アルミニウムを触媒として使用し、フリーデル・クラフツ反応を通じて生成する手法も存在します。

クロロアセトフェノンはその強い催涙作用とともに、歴史的および化学的な側面からも興味深い物質であり、現代においてもその利用方法は多岐にわたっています。

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