クロード・ジョセフ・ヴェルネ

クロード・ジョゼフ・ヴェルネは、1714年8月14日にフランスのアヴィニョンで生まれ、1789年12月3日に没した画家です。彼は、息子のカルル・ヴェルネ、孫のオラース・ヴェルネも画家であるという、芸術一家に生まれました。

生涯

ヴェルネは、画家である父アントワーヌから絵画の基礎を学びました。その後、地元の画家フィリップ・ソーヴァンのアトリエで本格的な絵画の修業を始め、さらに装飾画家のジャック・ヴィアリのもとで仕事をしました。1731年には、コーモン侯爵家の仲介により、貴族の邸宅の扉口上部を飾る風景画を制作し、独立した画家としてのキャリアをスタートさせました。

ローマ留学

1734年、ヴェルネはコーモン侯爵らの支援を受け、ローマへ留学しました。アヴィニョン出身であることが教皇庁とのつながりを深め、ローマのフランス人社会にもすぐに溶け込むことができました。正規の留学生ではありませんでしたが、フランス・アカデミーへの出入りも許可され、絵画の勉強に励みました。

ローマでは、アドリアン・マングラールに師事し、17世紀のフランス風景画を深く研究しました。クロード・ロランやサルヴァトル・ローザなどの作品に触れ、またイタリアのジョバンニ・パオロ・パンニーニやアンドレア・ロカテッリなどからも影響を受けました。ローマ時代の代表作としては、『ローマのサンタンジェロ城と橋』や『ローマのポンテ・ロット』が知られています。

1740年代になると、ヴェルネは海洋画家・風景画家として名声を確立し、画家仲間やフランスの高官、イタリア人、特にイギリス人から多くの注文を受けるようになりました。1743年には絵画『アンツィオの海岸』によりアカデミア・ディ・サン・ルカに迎えられ、1746年にはフランス王立絵画彫刻アカデミーの準会員となりました。同年に描かれた『カプラローラのヴィッラの眺め』は、18世紀のトポグラフィーの傑作とされています。

連作『フランスの港』

20年ほどのローマ滞在を経て、ヴェルネは1753年3月にフランスに帰国し、同年8月23日には入会資格作品『日没の風景』によって、風景と海景色の画家として正会員に認定されました。同年9月には、国王ルイ15世からの注文で、連作『フランスの港』の制作に取り掛かりました。この連作は、ルイ15世の治世下における最大規模の注文であり、フランスの産業や軍事を示す教育的な内容を持つものでした。

しかし、ヴェルネは旅行による身体的な負担や、多くの港を独創性を失わずに描き続けることの難しさに苦労しました。『フランスの港』シリーズの制作に対しては、画家の自由な創作を制約するものであるという懸念の声もあり、ヴェルネ自身もそのように感じていたようです。結局、当初はフランスの主要な20の港を描く予定でしたが、10年の歳月をかけて10の港を15点の絵画に仕上げたところで中断しました。

評価

ヴェルネは、「まったく驚嘆すべき画家」として、ジャン・シメオン・シャルダンとともにドゥニ・ディドロから「絵画の魔術」と称えられました。18世紀の批評では、ヴェルネはしばしばクロード・ロランと比較され、ディドロはロランを単なる風景画家と評しましたが、ヴェルネについては歴史画家であると評価しました。これは、連作『フランスの港』に見られるように、ヴェルネが地方独特の風俗を多様に表現したことによるものです。

1763年、ジョフラン夫人の依頼で、ジャン＝フランソワ・マルモンテルの牧歌的な物語をテーマにした『アルプスの羊飼いの娘』を描きましたが、この作品はサロン展で「自らの進むべき道を逸脱した」とディドロから批判されました。ヴェルネはあくまで歴史画家であり、パストラルな作品に手を出すべきではないと考えられたのです。

ヴェルネの作品は、その写実的な描写と、風景の中に息づく人々の生活を描き出す卓越した技術によって、後世の画家たちに大きな影響を与えました。

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