グスクカンアオイ

グスクカンアオイ（城寒葵）

基本情報
グスクカンアオイ（学名: Asarum gusk）は、ウマノスズクサ科に属する多年草で、名前の通り「グスク」は城を意味しています。この植物は、日本の奄美大島に固有で、特に島の中南部の常緑広葉樹林に生育しています。そのため、奄美大島の自然環境と密接に関連しています。

分類と歴史

グスクカンアオイは、1936年に植物学者の前川文夫によって採集されましたが、当初は正式な名前が付けられませんでした。前川の死後、1988年に初島住彦と山幡英示がこの種について詳細な記載を行い、発見された地名「グスク」にちなんで名付けられました。この植物は、日本に生息するカンアオイ属の種の中でも特有の花被構造を持ち、従来の分類体系ではどの節にも属さないという特性があります。

生態

グスクカンアオイは、おもに奄美大島の中南部に生息しており、特に標高300-450mの常緑広葉樹の林床で見られます。この地域における生育環境は非常に限られており、ほとんどの株はこの特定の環境内で確認されています。
葉の大きさは6-9cmの長さと5-6cmの幅を持ち、基部はハート型で、先端は狭卵形か矢じり型に伸びています。葉の色は暗緑色で、光沢がないのが特徴です。また、葉の表面や縁、および葉柄には細かい毛が散在しています。

花は淡緑色から緑褐色の地に紫がかった色合いを持ち、短い花柄の先に壺状の萼筒が付きます。萼筒は8-16mmの長さで、筒の口はヒダ状の隆起が花開く形状をしています。咢筒内の網状突起はそれほど発達せず、雌蕊と雄蕊が収まる部分の壁には不完全な格子模様や痕跡程度の筋状隆起が見えます。雌蕊は6本、雄蕊は12本あり、開花時期は1月末から始まり、2月末にはほとんどの株が花をつけます。

保護状況

グスクカンアオイは、生息場所の制約と森林伐採、さらには盗採によって絶滅の危機に瀕しています。2015年のIUCNレッドリストでは、この植物の推定生存株数は約100株、生息面積はおよそ100平方キロメートル未満とされ、絶滅危惧ⅠA類（CR）に分類されています。環境省のレッドリストでも、推定開花株数が50個体未満として同様の絶滅危惧ⅠA類に位置付けられています。また、鹿児島県のレッドデータでも絶滅危惧1類に分類されており、保護が急務となっています。

このようにグスクカンアオイは、固有の生態系を持ちながらも、環境変化に脆弱な植物であり、その保全が重要です。未来のために、この希少な植物を守るための取り組みが求められています。

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