グスタフ5世 (スウェーデン王)

グスタフ5世：激動の時代を生き抜いたスウェーデン国王

グスタフ5世（1858年6月16日 - 1950年10月29日）は、スウェーデン・ベルナドッテ王朝の第5代国王として、1907年から1950年までの長きにわたり在位しました。オスカル2世の息子として生まれ、ヨーロッパが帝国主義の時代を迎える中で王位を継承しました。

第一次世界大戦と中立政策

即位当時、ヨーロッパは第一次世界大戦の危機に瀕していました。ドイツとロシアの対立が激化する中、グスタフ5世はスウェーデン伝統の中立政策を維持する決断をします。1914年12月18日には、ノルウェーとデンマークの国王をマルメに招き、三国国王会議を開いて中立政策の維持を表明しました。この中立宣言は、後の第二次世界大戦前夜にも行われました。大戦中、スウェーデンは連合国による海上封鎖やドイツ軍の攻撃を受けながらも、中立を維持しました。ただし、フィンランド独立後の内戦では、義勇軍の出兵を黙認しています。

戦後、スウェーデンは国際連盟に加盟しますが、その国際情勢への対応の弱さに失望し、再び中立政策へと回帰します。この政策は、近隣諸国に対して冷徹であると批判されることもありました。

第二次世界大戦と苦悩

第二次世界大戦において、グスタフ5世は中立政策を強く推進し、他国への援助を拒否しました。当時のスウェーデン社会民主党政権の首相、ペール・アルビン・ハンソンは、国民を総動員し、50万人の国民軍を編成して中立を維持する姿勢を示しました。ナチス・ドイツはスウェーデンに対し様々な要求を突きつけましたが、グスタフ5世は中立政策を貫きました。その後、政府は中立違反ぎりぎりの政策を取りながらも、1944年に入り連合国の要求を受け入れ始めました。

しかし、スウェーデンは完全な中立を保っていたわけではありません。両陣営には多数の義勇兵が参加しており、特にナチス・ドイツの武装親衛隊には、約100名のスウェーデン人義勇兵が所属していました。その一方で、スウェーデンは反ナチス活動家や亡命者、ユダヤ人を受け入れ保護しました。また、外務省は日本の和平交渉を仲介し、外交官ワレンバーグが活躍しました。グスタフ5世自身も、ナチスのホロコーストに対し非難声明を出しています。戦後、スウェーデンは北欧諸国に軍事同盟を持ちかけましたが、これは実現しませんでした。冷戦時代に入ると、北欧はノルディックバランスを構築することになります。

晩年と私生活

グスタフ5世は長寿を全うしましたが、晩年は決して幸福とは言えませんでした。1947年1月には、王位継承権第2位であった孫のグスタフ・アドルフが航空事故で亡くなり、1948年9月には甥のフォルケ・ベルナドッテ伯がパレスチナで暗殺されるという悲劇に見舞われました。グスタフ5世は、これらの不幸から2年後の1950年10月29日に92歳で崩御しました。

私生活では、10代の頃から鼻眼鏡と先の尖った口髭を身に着け、そのスタイルを生涯貫きました。1876年のイギリス留学を機にテニスに熱中し、自らも選手として活躍するだけでなく、帰国後に国内初のテニスクラブを創設しました。第二次世界大戦中は、ゲシュタポに逮捕されたテニス選手のジャン・ボロトラとゴットフリート・フォン・クラムへの寛大な処置をナチス政府に嘆願し続けました。これらの功績が認められ、死後の1980年に国際テニス殿堂入りを果たしています。

また、第二次世界大戦中は中立の立場を示した数少ない国王であったため、戦中・戦後も昭和天皇との間で誕生日の祝電を交換するなど交流が続けられました。崩御後、新たに国王に即位したグスタフ6世アドルフが天皇に親書を送っています。

一方で、グスタフ5世は男色を好み、愛人の給仕人クルトにゆすられて多額の金を支払っていたというスキャンダルも存在します。1950年代にこの事実が明るみに出ました。

グスタフ5世は、激動の20世紀前半を生き抜き、スウェーデンの中立政策を維持した国王として、またテニスを愛し、国際交流にも貢献した人物として記憶されています。

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