グナエウス・ドミティウス・カルウィヌス

グナエウス・ドミティウス・カルウィヌスは、紀元前1世紀の共和政ローマにおいて活躍した人物です。ノビレス（貴族）であるドミティウス氏族の出身で、紀元前53年と紀元前40年の二度にわたり執政官という要職を務めました。彼は、ガイウス・ユリウス・カエサル、そして後のアウグストゥスとなるオクタウィアヌスの支持者として、内戦や外征で重要な役割を果たしました。

生涯

カルウィヌスはカエサル派として紀元前53年に執政官に選出されましたが、就任直後から政治的なスキャンダルに見舞われます。紀元前49年に勃発したカエサル派と元老院派との内戦では、カエサルを支持し、紀元前48年のファルサルスの戦いでは、カエサル軍の中央部隊を率いて勝利に大きく貢献しました。

内戦後、カルウィヌスはカエサルによって小アジアの統治を任されます。しかし、ポントスとボスポロス王国の王であったファルナケス2世が、ローマ内戦の混乱に乗じて小アジアへの侵攻を開始します。カルウィヌスはポントス軍と戦いますが、紀元前48年、ニコポリスの戦いで大敗を喫してしまいます。紀元前47年8月、カエサル自身がゼラの戦いでファルナケス2世を破り、失地を回復しました。カルウィヌスはこの失態にもかかわらず処罰を受けることはありませんでしたが、その後、重要な戦いで起用されることはありませんでした。

紀元前44年3月にカエサルが暗殺された際、カルウィヌスがどのような行動をとったのかははっきりしていません。しかし、紀元前42年のフィリッピの戦いでは、オクタウィアヌスとマルクス・アントニウスの側に立ちました。しかし、イオニア海での戦いでグナエウス・ドミティウス・アヘノバルブスに敗北し、2個軍団を失うという失態を演じています。

フィリッピの戦いは、最終的に第二次三頭政治側の勝利に終わり、カルウィヌスは度重なる失敗にもかかわらず、紀元前40年に二度目の執政官に選出されます。これは、彼が政治的に重要な人物であり続けたことを示しています。紀元前39年からはプロコンスル（執政官経験者が就任する属州総督）として3年間、ヒスパニアの総督を務めました。

紀元前36年7月15日、カルウィヌスは凱旋式を挙行し、戦利品を用いてレギア（王の家）を建設しました。その後の彼の足跡ははっきりしていませんが、碑文から「Arval Brethren」という宗教団体のメンバーであったことが判明しており、この碑文に紀元前20年まで生存していたことが記録されています。

カルウィヌスは、カエサルとアウグストゥスという二人の偉大な指導者の下で、政治的、軍事的に重要な役割を果たしましたが、同時に多くの失敗も経験しました。彼の生涯は、共和政ローマ末期の激動の時代を象徴するものと言えるでしょう。

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